おとのは ことのは

詩と曲を書いています。

2023-03-01から1ヶ月間の記事一覧

春と自由の物語

数える春には意味がなくて 懐かしむくらしに留めておきましょう 思い通りは願うほど遠ざかる 身を以て知った苦悩の先に 急な坂の上 バス待ち寝たふり 喉渇いても 水筒は空っぽ 柵を越え 草むら飛びこめ もういいのよ はしゃいでくれても 真面目に輪をかけて …

海とあなたの暮らし

赤レンガの先に 海を見たわ 物めずらしくて 騒いだわけじゃない むしろそうね 懐かしさまじり 春陽の先に 海を見たわ 今だったら ほんの少し素直に なれなくても 簡単にはなれなくても 難しいこと考えるのを 少し止めて あなたの手を取る そんな覚悟が持てる…

病める時

病める時が 元の元から だったものだから 思い至らぬ その言いに 風のさまに 敏感な質 それだけを 良しとするか 健やかなる時は いつ来るのか 待てど暮らせどの うちに死ぬ 雨の勘 少しばかり 早く見取って 良いことだろか 病める時が つづく少女が 大人にな…

人間と夜

人と交わることを避けた 怠惰は自分の心持ちに返る 指は動いて 声も出るけれど 聞くと話すが遠ざかる 否応なしに街に出れば 連れ添う人ばかり 当てられた気分は 持ち帰ることになり またの嫌悪が街を遠ざける 断ち切った家族も 嚙み合わぬ友も 置いてきた恋…

美しい傷

少し冷めてしまった湯を注ぎ 面倒くさがりが茶を啜る 古い家で得た一瞬の 和やかな香りが泣けてくるでしょ 明日には治るか 治れ 美しくとも拒絶したい まだ来るか 痛みは痛み 称えられることなどないのさ 前に進むなどと世間のたわ言が 垂れ流される通信を切…

A

彼の姿は狡く鈍く けれど憎めないように出来ているのは 心の内が清らかであれ 誰もが願うそれを持っているから 抱きしめる 不意に それが運命になるのね 明日 空が晴れても たとえば天が荒れても 彼がいる大地は 美しく輝く 願わくば 隣にいたいと思う そう…

ココアフリーク

大声で泣くことがないよう 居場所を選んだ結果 楽にもなり 弱くもなった 気がするわ ほっとひといき 言いわけばかり 並べて今日も ゆっくりと ココアをいれましょう 大抵のことは それでどうにかなる 学んだし そうであってほしい 少しでも泣くようなことが…

講釈

追わなくなった物語は 知らないままがいい 頼んでもないのに知りうる あふれた世だというのなら こちらから選んで掛かればいい あなたの言葉の端を 気にして深読みして 勝手に傷つく そんな無様を知られたくないから すべて覆い隠してやる 街が嫌いだという…

部分的追憶

色のまじり 分かれて泣いた 絵本の名前を 忘れたけれど とてもとても好きだったことを 覚えている 覚えている そういうふうに 私はできている

生きた心地

例えばなしではなくて 生きた心地のしないこと 誰にどう伝えたら ほんのかけらでも届くだろ 分かると言われても 癪な性分 分からないと言われても 落ちこむくせ 四六時中に思い 生きた心地などしたことのないこと 押しこめたつもりでも 知らんぷり決めこんで…

片恋の夏

後ろ姿の似た人を 目で追った時がはじまり 夏のにおい グラウンド見下ろした 胸が音立てて 叶うことない片恋を 何年続けることになるなんて 少女にはまだ 季節ではまだ 知れなかったんだ 後ろ姿の似た人を 探し始めた時が浸かり 夏の足音 雨も入りまじる 視…

ひきずる夜

こんなカラッと晴れた日に どうして選んだ 息つまる情歌 まだ腕の中 冷静になれば 獣の夜が 馬鹿馬鹿しいとも 吐けるもの 愛は最初から 無いと決めこめ 肌なぞる人の 心疑え 風は少し ほんの少し カーテン揺れる部屋の隅 まだもう少しだけ 微睡んでも 罰は当…

日暮らし

or not to be のその心を 愛以外で知ろうとすれば 哲学か病かに 限られてくる頃合い 行きつけたつもりの cafeも居心地が 碌にmenuも言えないのか 情けない 我が身ひとつ なんとでもなるくせに 帰りの電車は 混んだ時間帯で 後悔ばかりも嫌だけれど 何でも笑…

無縁の春

花持ちの人がちらほらと 帰り電車の春は便り 季節も天候も関係なく 生きるでなしに暮らす者には まぶしくて疎ましくて そんなこと思うにつけ あぁ疎ましいのは此方だった 思い上がりが過ぎた もう儚むかと 極端な思考しかできず 当たり前に添う 家族がある者…

町歩きの少年

笑われてばかりの町を出たから とぼとぼ歩きも 溶ける消える 誰も後ろ指差さない代わり 僕の身体は見えていないかも 聞き覚えある異国の歌が 漏れ出る酒場に引き込まれても 入り方も 入っていいかも 知らないから 通りすがりさ 親の町人の 圧がない代わり 例…

春陽

戸を閉めてしまえば 夢は終わるのに どうして春陽の差しこむ哉 痛む肌につき あんなに揺れたこころが 恥じらい 今になって 貴方の息遣い 知ることができて その瞬間にこれが最後ねと 分からないとなんて 明日は別離なんて 思えるはずない 腕に縋れば 春陽の…

宵は気の触れるころ

眩暈の午前0時 それでも1人と 詠った人が昔 いたこの世 泣いてしまわないように 予防線は幾らでも かろうじて走る電車 駅前愈々疎ら 意地でも外に出るわ 危険より情緒に 生きるなら生きるなら 外の気を知らなければ そうね生まれ落ちて 母に抱かれていたの…

思いのほか長い暇

あまいチヨコレイト あつい紅茶で溶かしておくれ 入口の開く迄は どうせ待ち待ち この浮世 肌の這うところ ささやきの残るも 明ければ幻の どうせ泣き泣き 女子など 季はゆき 病の波満ち引き いつまで寄っていられるやら 少しばかり姿を見せて 声落とすか 言…

宵泣きのおとなたち

身の上話もほどほどに 酒場は開き 太陽の準備 そうくることは分かっているさ 一歩手前 少しばかり酔わせて どうせ死にゆくものがたり 宵に泣き泣きさせてくれ ふらつくことが得意な女 誰の腕でもいいわけでなくて 四方山話の溶ける酒 いずれ横たわり 地獄の…

日のまじない

時計台の下 彼は花を買って 名も知らぬのに愛でていた 緑駆ける子は 待てど暮らせどの 此方の生き死にも知らぬもの もう十何年前 酒飲みを断って 言い合いした日付だ覚えて 異国の砂糖菓子 口にしたら終わり 止もせず食みつづけた放課後 忘れても忘れても 押…

つれなき身

寂れかけた駅の暮れ 行き交いに混じり埋もれてしまう 5分遅れに動じない 電光掲示板は流し見るだけ そんなことよりね あぁ思ってしまった どうして皆 当たり前のように家族が在るのだろう 隣を歩き 言葉交わす その営みが 通り過ぎざま すれ違いどき 異空間…

green

海の青より好きな木々 捻くれお嬢も敵わずの 今日も風吹きに揺れ 抗うことはしないのね もうすぐバスが来るけれど それまでそばで見てていい? 吐きそうな時間を幾つも持ったら そのまま死んでしまいそうな青春 生きて生きて 唱える歌より ただその緑が心に…

胸痞え

そんなつもりはなかったのに 昏い道歩く 重い足 何年たっても囚われる 胸痞えた幼き日の 人の愛を騒げば また伏せてみる 明るいうたには 不機嫌の立つ そんなつもりはなかったのに 踏み外した道 はじめから? 今を生きるなど言われても 抜けぬ途絶えぬ幼き日…

後悔の真中

夜も真中を過ぎて 身体の感覚は重くなる一方 音楽に興じたつもりも 投げ遣りに任せたつもりも 何方も夢か どうせそう言って現か 布団目深に被る癖 息ができぬと嘆くくせ 普段から自分追いつめて 何が楽しい馬鹿女 もう少し自由な夢を見させて 御伽の国とは言…

或る教え

たとえば 心が通じていなくても 話のすっと通る人 振る舞いで思慮を得られる人 同じ世界にいるような 錯覚を持ってしまって この世の苦しさ惨めさと ほんの少しの理解共感を 相反するものとして 共通敵のように思いこんだ 幼子が大人になるころに 誰かがちゃ…

君待ちの渚

そんなつもりがなくっても 坂下る癖 君待ちの 遠いチャイムが来る渚 時を知るには十分の 記憶と経験を持ったのさ 行き違いの 怖いには 生きることも含まれる 明日、明日 会えるかなを 繰り返したその先に あっさり消えた人 潮香忘れた人 むかし噺があったよ…

home

放課後 風のやわらかに反して 胸はつまり たいして 楽しくもなかったけど 帰り道がつらいのは もっともっと 苦しい場所へ 向かう足取りの 呼び名がそれだから 身体が浮きはじめたのは 感覚をなくしたいと思ったのは いつからだった もう思い出せない いのち…

眠り起きの苦手なあの子のこと

眠り起きの苦手なあの子のこと どうやってそばにいようかと悩む 僕の健康体をあげるわけに いかないのが悔しいな 散歩に誘うの たくさん話しかけるの 怒ったりしないかな 嫌でも言えなかったり 考えても考えても あの子の心に 追いつける気がしないのは 生き…

秋口の祭り日

人酔いの街を出て カラコロと細道を 裾引かぬように歩きます 貴方そろそろ来るかしら 祭りの音 離れゆく 少し息の上がる早足 鞦韆が揺れている 草木の向こうに見える もう手を取って歩くことが 何時ぶりになってしまったの どんな話をしていたかしら もっと…

手紙の返し

あなたの手紙を読みました 相変わらずの乱れぬ字で 弱った様を綴られて 何を思えというのでしょう 私が行いを悔いれば 例えば人生を閉じれば 満足するような人でなく 乱暴を嫌う節もあり 優しいように見せかけて 此方に言いわけさせぬ技 静かに責めてくる様…