おとのは ことのは

詩と曲を書いています。

小生が雨

急に降り出した

予報は見てなかった

現代にあるまじきずぶ濡れだ

 

君は優しいから

言えば駅まで

迎えに来てくれんだろな

 

カッコ悪いから隠したいな

こんなんじゃ愛とは言えないか

 

どうやったって理想より

暮らしが付き纏う濡れ鼠

ざまあないね

生き急ぐのも無理ないね

 

排水ポンプがぽこぽこと

割と近くに汽笛も

そうして布団を頭まで被った

もう気配だけで軽く儚める

 

君は優しいから

おかしいなんて言わない

それも申し訳なくてな

 

できればいい夢みたいな

昨日は散々だった

飛び立ったつもりが撃ち落される

 

何やったって理想より

低く収まる味気ない娘

見てらんないね

それが生き様になるなんて

 

まだ飽きもせず降るもんな

風流を感じられない体たらくになっても

空の下にしぶとく居るもんだ

許されざる者

花時計は風受けても

扉は開かず

冒険譚の末に辿り着いたのが

こんな海辺とは

 

湿った空気も

投げられる言葉の

苦しさも

吹き飛ばさんと

無理やりにでも

世は美しいと

締めさせようとする

意気地がね

 

白い大橋

隣の島へ

水の光は太陽の声

 

生きて生きて

その先に

何があるでもないことを

悟ってもまだ

生きて生きて

 

見知った人が通りゆくのは

気まずくもあり

故郷ともいう

 

耳に残る煩わしさを

越えてくる平気で

潮の香り

 

泣いてたまるか

いつの間にか

許されざる者

身を縮こめた

 

ここで息をすれば戻れるか

いつに?そうか

生きて生きて

輝き焦がれる時などなかった

 

暮れの小舟に連れてゆけと

無理矢理でも祈りの通る

島で花時計は風受けても

黙して扉は開かず

 

生きて生きて

疲れ果てても

この身ごとか

魂だけかが

何れ海辺に帰るのだろう

夜の駅までも駅からも

電車の中

まばらな人

皆下を向いて

いつの間にか外の景色も

見えないや

 

もう日常に溶け込みすぎて

何なら避けたいくらいの乗車

思い出している

初めて電車に乗ったころの

暗がりと

広がる都会の心地よさ

 

海のように澄まなくても

ワクワクしていたまだティーンの

私が見た窓向こう

 

振り返りたくも

見定めたくもないけれど

いつからか

あとはどう折り合いをつけるかの

問答ね

認めたくない彼是が積もる夜ね

 

改札の電子音

味気ないなんて

すぐに文句師

便利は有難く享受して

懐かしさを美化するのはやめましょう

 

空の青さなど今は思わず

とぼとぼ帰れば

この足で

倒れるわけにはいかないし

 

だけど

自分というものが寂れてゆくだけの

 

青い季節は極端に短く

それもまた去りて気づくもの

自分を宥めてゆきましょう

生きるつもりがあるのなら

明日へ連れてゆきましょう

letter

恥ずかしいという感覚が

生まれてからずっとあります

何をしでかしたわけでもないのに

そもそも備わっていたような気がします

 

恥ずかしがりやとかシャイだとか

そういう可愛いものではなくて

存在からぐらついているような

身が縮こまる思いです

 

太宰に倣って

謝るべきなのか

それも烏滸がましい気がしてきて

 

何の罪も犯していないのに

なんなら生真面目に生きてきたつもりです

それでも身から湧き出る

居た堪れなさや申し訳なさは

 

生きていればずっと続く気がします

向こう側へ行けば消えるのかもしれず

試しに向かう意気地もなくて

唯々、恥ずかしいという感覚が

居座り続けているのです

傷もつ部屋

4階まで階段をあがる間に

悔しさは増してくる

早く 何にもなくても平気になりたいな

 

愛が大事って馬鹿みたいな迷信

だけど土台がないと確かに

何者かにならねばいけないような

切迫感があるもの

 

玄関のドアを開けたら

自分ひとり転がる部屋

整わない人生

 

春はじめの陽気にあてられて

浮かれていたのは昼間のこと

浮沈みの激しい損な性分

 

少し何か言われただけで

傷つくのは言わずもがな

少し何か言っただけで

追いつめられる気にもなる

 

誰かを傷つけた可能性のほうが

世に間違っている不安のほうが

自分が傷むより余程堪える

 

煎餅布団に身を

沈めるほどもないけれど

落ちこみ過ぎないように

忘れる記憶ができている人類の中で

少しの誤作動で生まれた

 

忘れようとするほど思い起こすことも

あるでしょう

 

明日は見ていないけど

おそらく晴れ

泣いたり笑ったりは

そういうのが得意な人の仕様

 

また階段をおりて

世に出るまで

暫し眠るだけの夜半を

むすめ探し

小花散らした可愛らしい

ワンピースだったわね

薄ピンクの

見つけたら此方に

連絡頂戴な

会えなかったら其処までね

 

慣れない西の街に出て

友達と色違いを買ったのだと

言っていたから

 

伝手たどれば

何処かで行き着くでしょう

苦手話に拍車がかかり

簡単には応じてくれなさそうね

 

先に去るからといって

我儘は利かないものよ

其れだけ心して頂戴

 

季節に呼ばれて

水に呼ばれて

去る者行く者

あるからね

 

移ろう時がいちばん危ないものよ

 

道たどれば

何処かへは着く都会のように

広く世界を見られないからね

案外近場で迷い子やも

 

先に去る者は美しく

ありたい幻想を

押し付けないで頂戴

 

季節を重ねて

これからも生きてゆく者のほうが

大事に決まっているじゃない

 

探すのなら

もう探さなくてよいねと

言えた時が終着点

 

並木向こうも春ざかり

香に当てられるとはこのことで

恋も暦もおなじこと

春気のして

斯くも容易に狂っていくものか

 

電車は遅れている

それでいい

狭い星をそんなに急いで

何処へもゆけないのだから

 

めぐる中に大人しくいて

すっと収まることだけが

私たちにできる唯一の

歴とした営みでしょう

 

雨も来るなら結構

その香嗅ぎつけて籠るだけ

 

花が散るとはこのことで

恋も揺らぎに似せられる

春気すぎて

斯くも容易く移ろうものか

 

駅前は混んでいる

並木の向こうにもう見えて

誘うようで離れたくて

どうせ運命なのだから

 

しゃがみこめば一瞬で

去ることもできる世に噛む

私たちが過ごした日々など

いのち消えれば忘らるる

 

晴れてくるなら結構

その香に呼ばれて道行くだけ

おさな子の夏終わり

岩陰にかくれてどしたの

もうみんないないよ、だいじょぶ

 

苦手だったことができるようになるよに

もっと苦しくなることもあるね

 

髪は夏終わりの日に透けて

どこから降った天使の子

ひざを抱えて泣くほどに

小さな心きずつけたのは誰

 

もうすぐじんわりと暮れてゆくから

一緒にかえろ

手をにぎってもいい?

 

すみっこにいたら見えないもの

もう誰もいないよ、だいじょぶ

 

一緒に見たいと思ったんだよ

世界の真ん中にいる感覚を覚えてね

 

海は盆過ぎて凪ばかり

どこから来るの秋の香も

指先汗ばんだ涙ごち

小さな心これからは少しでも

 

弾むほうへ明るいほうへ

君が望むほうへ行けますように

まだ手を引くけれどいつかはね

 

ここにいるうちは

一緒にかえろ

ゆっくり歩くから

日に月に依る影

慣れないみたいだね

明るい部屋は

少しずつ溶かしてゆきたい情話

 

ロマンより先に

目の前の君を見て

話をして感じていたいと思った

 

頼まれずとも

日は傾いて

夜半は来る

 

指先から少しずつ

温めていこうか

どうせ春と呼ぶには少し早い部屋

 

暦より先に

目の前の息づかい

重ね合わせて感じていたいと思った

 

頼み込んでも

夜は更けて

日は現れる

 

雨の予報を撥ね退けた

明るい光が差す東向き

 

寝覚めはいつも

夢だろうかと

悪いほうの想像から

入ることにしている

 

頼まれずとも

日も月も

傾き翳り

時に閃いて

 

繰り返しているだけなのに

死に近づいてゆくだけの命を

ややあって

燃やせということなのか

 

ぼんやりと思い至すうち

日は傾いて

夜半は来る

須らく遠ざかり

まわりの音がすっと消えた

すべてはじめから

なんにもなかった、みたいね

 

あなたが遠ざかってゆく

夢を何度でもみて

 

ホットチョコレートを口にした

感触はあって味はしないの

 

生きていても

そんな気分

死んだとても

きっとそんな気性

 

泣いたりは

しないでしょ

子ども心に思ったもの

泣いたりは

したところで

なんにも残らない星

 

まわりの音が

もししていても

感触のひとつも残さない

 

温かいカップを手にした

覚えているのはそのくらい

 

生きてみても

いいじゃない

そうやわらかく歌うなら

死んだとて

 

泣いたりは

しないでしょ

立ち会うことはあれ以来ない

泣くことも

忘れたでしょ

どうせ何にも残らないから