おとのは ことのは

詩と曲を書いています。

遠きにありて


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遠きにありて思うもの

人はふるさとと云うけれど

僕には見える 凪ぎもせず

生きてもいない日から来る

 

遠い、目の前の物語

世紀を越えてなだれ来る

情の起伏にもう溺れそうな

景色の移りに眩むような

 

草かげ 身をひそめて

数えた金平糖

池の端 待ち人は

来ずとも 破れ文

 

遠いはずだった戦場が

動悸持ち 責め苦なら

 

誰かが生きた物語

幾つ この身に降るのやら

瑕疵は決して避けられぬ

幾世かに一度 起こるもの

 

人知れず絶えた息

肌また傷持ち

渚に風の来て 移る場面

 

とぼとぼと

なかまはずれの夕惑い

讃美歌に曳かれるよ

 

遠きに生きたものばかり

誰の記憶か なだれ来る

真夏、照る日に焼かれそうな

まじないのうちに晦むような

 

遠きにありて思うもの

人はふるさとと云うけれど

虚ろうつろな身のうちに

生きてもいない記憶が降る

 

遠い、目の前の物語

情も景色も絶えること知らぬのか

夢と紛うほど

僕には見える 凪ぎもせず

省と唱え

泣かせた奴は誰だ

一番の悪は誰だ

 

その追及をいつまで経ってもやめてはいけない

 

同時に

それだけに囚われたらいけない

 

もっと身近に

次善の逆か

次悪になっていないか

 

日常を点検して

 

根詰めて苦しくならないよう

だけれど同時に

少しでも誰かが楽になるよう

 

唱えて唱えて

何百年でも

声を神経を

声が思うように出なかった

心閉ざして発さなくなった

 

どちらが先だったか

卵ニワトリを

ずっと考えているけれど

思い出せないな

 

だけど今でも

押し留められたような

押し黙ってしまうような

 

この心理が細胞に神経に

自然と伝わっているのは

理屈でも心情としても

分かってきた

 

声が思うように出せるには

心が思うように在ることが

きっと大事なのだと

 

言い聞かせながら

恥をかきながら

 

改善する過程では

一度悪化する

しかし確実に良くなっていくことも

別件で知ったから

 

大丈夫

年を取った利点ね

花火と墓場

にぎやかに送り出す地域がある

にぎやかどころか

真夏には爆竹を鳴らし

けたたましいくらいに

空が明るくなる

 

私の生まれ育ちは

そのにぎやかと一般的な厳かの

丁度あいだくらいの遣り方で

 

どちらも持っているから

どちらも慣れなくて

気の遣り場に迷ったもの

 

何にも考えず

たのしく花火をしている子が

羨ましかった

 

とはいえ私も多少は

気躍っていたけれどね

はじめての葬列

葬列に慣れない僕は

なるだけ日常が冒されないように励んだ

 

それは心のうちのこと

誰にも知られていないけれど

 

まだ制服で許された時分だから

黒に覆われずに済んだ

 

だけれど思い出し過ぎる質がある

日常に蘇ることにならぬよう

 

とにかく目を逸らした

現実ではないと思いこんだ

 

さして思い入れない人ですら

葬列というものは怖かった

凪は遠くなる

どうしても

凪は遠くなるさ

 

君が望んだんだ

地球はそんなに簡単じゃないと

聞いている

 

耐える時間が

何十年

何百年と延びても

耐えるしかないのさ

 

君が望んだんだ

すべての思い通りはならないから

 

絶えるよりはの

次善

 

どうしたって

凪は遠くなるさ