遠きにありて思うもの
人はふるさとと云うけれど
僕には見える 凪ぎもせず
生きてもいない日から来る
遠い、目の前の物語
世紀を越えてなだれ来る
情の起伏にもう溺れそうな
景色の移りに眩むような
草かげ 身をひそめて
数えた金平糖
池の端 待ち人は
来ずとも 破れ文
遠いはずだった戦場が
動悸持ち 責め苦なら
誰かが生きた物語
幾つ この身に降るのやら
瑕疵は決して避けられぬ
幾世かに一度 起こるもの
人知れず絶えた息
肌また傷持ち
渚に風の来て 移る場面
とぼとぼと
なかまはずれの夕惑い
讃美歌に曳かれるよ
遠きに生きたものばかり
誰の記憶か なだれ来る
真夏、照る日に焼かれそうな
まじないのうちに晦むような
遠きにありて思うもの
人はふるさとと云うけれど
虚ろうつろな身のうちに
生きてもいない記憶が降る
遠い、目の前の物語
情も景色も絶えること知らぬのか
夢と紛うほど
僕には見える 凪ぎもせず