おとのは ことのは

詩と曲を書いています。

2022-11-01から1ヶ月間の記事一覧

薄らのこい

8時半の電車に乗って 顔の見えない人を見る 田舎の道をたった2駅 もう会えんのがうそのように 夢に見ても 何度見ても 連れていってくれないか こんな小さなからだは 目にも映らんまま 帰りはもうとぼとぼと それさえ遠い昔のはなし 顔の見えない人は今 存外…

きよら娘の目

慣れぬ紅の色が 何であれ違和感 それでも着飾れ身飾れと 急かす衆 あの娘は呆けではないけれど ちーっと何かが足らんのに 恋しらぬまま連れかれる 揺れ揺れ荷汽車は 昔のうたのように 小さなこころをぐらぐらと 明日はもう見知らぬ腕に いるのだろ いるのだ…

ゆるされない祭り

ひっそりとおこなうことは あたりまえ その香さえのこすな 秋がゆくゆく もうずんずんと 奴はくる きんと冷えた空気に 誰もあらがえないのさ 宵も宵 いよいよ逃げ場のない鎖 社の奥にはきっといる だーれも知らないだけだもの 澄んだいのちがきっといる 音を…

はたかれたぬいぐるみ

はたいたぬいぐるみ取り戻すこと たやすいという思いこみ 彼の胸には響かない 心の機微 やつれ切った顔で 宥めすかしてくる様が 腹立ち滑稽で 虚しくさえ思える ずれてくるのは 時代も地域も 仕様のないことで ただただそれを言い訳にするのが 格好悪いだけ …

夜伽御伽

夜伽話の続きなど 誰がききたいものですか 熱も穢れも知ったふり 苦しいことは目を瞑り 御伽噺の綺麗さに 連られて夢を見ていたら 終いにゃ痛い目見るもので 海の彼方にゃ消えないよ 夜伽話の美味しとこ 取って暮らせるわけもなく いつの世だって理不尽な 女…

切り者

ふるさとは 遠きにありて なお思わず いよいよの体たらく 人として 正しく在りたいと 念じに念じたのは 先のこと 親は必ず子を思うもの だからそれを返せとの教え では前提が揺らいだら こちらも無視していいでしょか ふるさとは 遠きにありて なお遠きもの …

渡りの節

かなし絵描きの成れの果て 積もり積った雪の下 やわき心を持ちすぎた そぐわぬ星に身ささげた あなたはきっと清き者 それが分かるもまた同じ 此処にはもう少なき同志 やれ探し出すには幾星霜 縋り帽子の影法師 やらし言葉も飲んだもの 正し世界に魅せられて …

わすれじのものがたり

もう誰も帰ってこない 小さな島にかつていた 海の響き 草木のかおり もう誰も覚えていない 小さな体をいっぱいにした 夕日の返り 夏のチャイム なくなってしまってもさ なくなってしまうんだろうけどさ だけど誰かが覚えてたほが ほんわかの気持ちになるでし…

わすれものがかり

もう誰も帰ってこない 小さな島に残された 汚い言葉 冷たい目線 もう誰も覚えていない 小さな体に浴びせられた 責めも庇いも 痛い拳も なくなってもいいけどさ なくなったほうがいいけどさ だけど誰かが覚えとかなきゃ 繰り返すこともあるでしょ だから異常…

風待ちと風負け

不器用に蹴りあげられた ボールの行方はいつでも風次第 うまく話せなくなった あの子の答えは風待ち 最良にこだわった その錆びついた手は風負け どれが悪いじゃない そういうふうにできているだけ ツタタ 踊りなさい もう狂い時間です ルンタッタ 呪文に惑…

もういるまやかし

春風の振りをした まやかしに気をつけて 人の心惑う それに付け寄ってくる 悪者ばかりじゃないわ それは確かだけど だからといって 気を許してはいけないわ もうするりと来る 気がついたらいるのよ 怖いでしょ さあさ必要以上に怯えなさいな 人間の力で まと…

焦げついた思い

誰もいなくなったグラウンドに まだ居残る夕風 バス停から見おろした 海と隣り合わせ 行きたいよ 駆けだして行きたいよ 何も考えずに君のところへ それができずに焦がれた日が 幾つもいくつも重なって 今 青春が閉じようとしてる 焦げついた思いが残る 帰り…

夜影

栄光の影にも行けなくて うらやんでいた小人たち 下には下がいることを 影の影もあることを 知らない宴人たち 積みあげた玩具 壊しちゃおっか 左手のキャンディ 振り回してさ 栄光の影にいる人が 嘆くさまを見ながらね 考えていた この世の酷は 極みなどない…

メロディー

戦のない国を 贅なき暮らしを 心通わせる友を 望めば切のない中で たったひとつ かなうなら 私はメロディーを欲する 胸にそれがあれば 生きていける気がする 遠ざからない彼を 心にいる神を 敬える母を 飾らない自分を 何ひとつ かなわないなら 私はメロディ…

さらしの夜

呑んだくれの行き場無しが 顔に似合わぬ夜をする たまには許してよ 神様もどうせ見てないでしょ 陽気でハイカラな 曲はかけんでくださいな 陰気が似合うよに 出来上がった女も たまにはいるもんでね あぁ街は煌びやか それでいい それでいい 責めも羨みもせ…

音楽との調和

音楽が離れていく音がして かなしかったな この世の皮肉をめいっぱい詰めこんで その気になれば 呼吸は乱れて 生きた心地のしない午後 学校でも仕事でもいいから 決まった時間に落ちあっていないと 気づいたら暮れてるくらいじゃないと 夕暮れに立ちあってし…

暮に忙し

月を見ていたことを忘れそな昼真中泣いてしまった子の手を引くには私もまた体小さく心も幼い 泣くな泣くなの唱えはきっとあなたの枷になるどうしよ帰り道帰って後も 烏鳴くなく歌のようには心地よくなく 片さない玩具の怒りも穏やかも一瞬朽ちてしまえと願う…

痛みなき森

皆 静かに 手を添えて少しずつ あやしてあげましょう 此処ではあまり見ない色味 血はよく通っている 大丈夫そうね 布を被せて いい子いい子 もう眠るまであと少し 皆 静かに 痛みなき森は 元来そう在るべきなのです

遠い目の前の物語

遠い目の前の物語 泣いて済むなら泣くものを 遥かに伝えは 澄む空を 見ていた朝辺の宵名残 風吹いてふわり 熱帯びてふらり 元来それでよかったはずの 何時に夕飯 何処向いて祈り まだ為せぬ業に惑う癖 酔え酔え 何人も 同じ土の下へゆくだけの 遠い目の前の…

追いも夜舞も

ただ何もなくても 弱い身体が 愈々重苦しくなる時節 手肌の荒れ始めて 季節より先 思い出させる親の癖 数え年にまじない 何時までも拙い 愛されなかった子がどうなるか 僅か余命で見せてあげよう 掛け違いじゃなくて はじめから はじめから 合わぬ肌があるも…

遠ざかるいのち

生きても生きても、 生きるということが 私には、遠いのです 命をもらっても 命を産み落としても 遠いものは、遠いのです かなしいかな 離人も感受も なんてことないほど なんてことないほど 生きるということが 遠いのです 生きても生きても、 遠いのです

たれいなくとも

誰居なくとも革命は起こる 忘れそうになる 秋深きに 雨は積んだ 武器を持たぬ 清い君は 塵屑のように 消えて 雨が淀んだ 悔し紛れの 世はこんなもの、が また虚しく響く 秋深きに 雨は積んだ 嫌よ厭世も汲み取り乍ら 革命は起こる たれいなくとも

月を見ていた君

丸い月は ところどころ薄れて 今にも逝きそう 本当のあちらへ 今見えているのが 当たりまえではなかった 月を見ては 思う人よ 恋と名づけたら 落ちつかないや そうね 宵の菓子でも摘んで そっと 冷やしておきましょう 丸い月は 綻びに負けて 愈々逝くよね 見…

散る恋

明日には幸せが泣いている 今日のうちに仕舞っておこう 空気の冷えこめば 彼は籠る これが最後かもしれない 恋はそっとしておいたほうがよかった 銀杏散りに踏みしめた 風は急に強くなる 私はすぐに斃れる 明日には幸せが散っている 今日のこの日刻んでおこ…

影が来る

明日になれば旅立った後の あなたの欠片を探るだけ 風吹きに大して何も残らない 草原が憎くなる前に 私もゆきたいわ 本当は このままだと このままだと 影が来る 幸福をくれた人が去れば 人生には 影が降る バス停のベンチは露に濡れた 気掛けてくれる人も …

祈る人

祈りを嫌いになった 教会の裏で 嫌いと言うほかなかった 海の前で 優しい歌に包まれて 思いを馳せることだけで 世界ができているならば こんなに捻た見方をせずに済んだのかな 唱える気になれない 古よりの言葉が 唱えるほどに憎らしい 消える気配なき言葉が…

影ふみの少女

影ふみの少女 嫌いと言われた帰り道 隣の家の硝子に映った顔が 情けなくてみたんなくて このままじゃ帰れないって思った でもね 帰っても嫌われてる この世界がもっと広いことを 薄々感づいていても 日常はこんなに狭い町 抜け出したいな 抜け出すにはもう …

暗き川

苦肉の策が日常茶飯事 冷やした果実はうんと甘く 梳いた飯は上手く流れて 生きてゆく術に困らない 代わりに情緒を失うな 暮らしの便利に添いすぎるな むつかしい むつかしい 現代社会と頭の中は いつでも乖離 こうやって心がたやすく病むといわれ 本当のとこ…

点滅

風向きに任せる勇気が つかぬ育ち方をしてきたのだ 責めることはできない 点滅する命を だましだましつなぐ 何為せなかったとして 恥じることなどない すやすや眠る子を 手放したくない気球 必死が命取りの それでもつなぎたい御心の 風向きに任せる勇気など…

冷え増す時の歌

うたいはじめの天使たち 暮らしに必死な若者も 何が分けたかこの様は どうか末には幸せに 教会を持たぬ街 どこから鐘鳴らし 冷え増す冬をつなげよう うたいはじめの天使には 道理わからぬこともあり ただただつなぐ歳明り どうか末には幸せに 教会を知らぬ民…