おとのは ことのは

詩と曲を書いています。

歌詞

影街

誰も責めちゃいないよ ただね 雨が少し 落ちる気になっただけさ 乗り換え駅の向こう 賑わいどおし 明るい兆し 誰にも見せたくないよ 噎せ返す熱 今日で最後ね 見送りなしに あなたの家へ お帰りなさい 恋のふりして 浸っていたいと 夜毎言っても 昼に忘れる …

恋熱の館

血吸いの物語に絆されたか また知らずの娘が迷いこむ 足元に気をつけて 歩いているうちは気づかない 影を見ておいて 身体の熱があがるころ それが病か知れぬこと 扉開けたらもう最後 楽に朽ちられる 筈がない まだ美し黒髪の 血巡りよい肌に 息を呑むでしょ…

僕の身も朽ちる

償いのつもりで 石に布団を 掛けるために帰る気にも ならない 明日には僕も朽ちる 怯え綻びてゆく 自分のことしか考えられないように 育てたのはあなたでしょう だから人の多く乗り込む船に わざとわざわざ向かう気になれず 世間の営みと逆をゆきたい 捻くれ…

遠く聞こえる

また便り待ち 時代にそぐわぬ 入り日待ち 暮れ終われば 諦めて 飯炊き やがて床に就く 単純な営みが 遠ざかってゆく世に ただついてゆけぬだけの 言い訳だとして 若くありながら もう暮れてゆくことを知っているから 老婆心が芽生える また便り待ち どうせ今…

カミサマノイウトオリ

眠る前に不幸を数えましょう 眠りつけない呪いでも 遠ざかる カミサマノイウトオリ 世間の美しさには そっぽ向いて 知ったことかと捻くれましょう だって誰がどうにかしてくれることでも ないでしょう 遠ざかるなら遠ざかれ どうせ どうせ カミサマノイウト…

物語にはなれなかった

気高き者たちが 歌を背に 渡ってゆく河 南向き 書に刻まれることになる いずれ知れる 息も狡猾も 語り継がれる 勇ある者たちが 希望携え 進んでゆく地平 風なじみ時 まだ生まれていない赤子も いずれ知る 木々も嵐も 焼き付いて消えぬ 物語はいつの世も 美し…

望むならひとつ

渇いてゆくこころに ことばはひとつもいらないから ただあなたが目の前に 現れてくれたらそれでいい この世で最も単純な そうしていちばん難しい あなたが手の先に いてくれるだけでいい 砂浜を浸してゆく 波のように こころ満たして あっけなく引いてゆく …

生きる目眩

記憶を失いそうになるのよ 生きているということ自体ごと だってこの朧気うつろが本当だと 誰が言ってくれた? 頭が回るほど 気が遠くなるのよ それはひとそれぞれのリズムで 話しても泣いても 全部は伝わらないから また生きているということ自体ごと 目眩…

刻む夜時

有耶無耶になるくらいなら あなたのこころに居座りたかった 灯り絶えない3号線を はさんで離れてゆく夜道 いっそ嫌って それでも抱いて 突っ伏して 死んでしまいたかった 階下は宴 隣は高速道路 ここだけただの 情にまみれる 有耶無耶になるくらいなら あな…

宵の苦時

咳の止まぬ宵に 背をさするものなくても 記憶でおつりがくる 逆にいえば 記憶がなければ いくら薬をよそっても 足りないのなんのって カミサマのせいにはできないから いつも自分で飲みこむしかないさ

越冬ならずの鳥

何で具合が悪いのか 分からないけれど暦は進み また来た 賑やかしの街 後悔も待たず 閉じようとするのは 流石に堪える やっと冬越しが完了しても 我が身が起こせないのなら 世は狭い 例えに聞く羽ばたきは 逞しいはずだけれど そこから外れるものもあるのね

年数え

また春につけて 気を読む 桜見事に散り給う 平安の世より 見出された美しさは 置いておけ ぼくの暮らしには 年数えが流行り 記憶はいつでも取って出し どこまで伝わるか 賭け事のように 頭の中をさらすまで また春に添いて 木々愛でる振りだけしながら 生き…

消失

声を枯らしたことが 名誉に変わるのは 死ぬ頃か 死んだ後 だから今は痛みだけ 痛みだけを持った 柔い生き物 声がうまく出ないことが 何かしら良いのだと探すけれど 悔しくてならないのさ きれいごとにはしないつもり

日記の端

遠いひまわり 抱いたりは できないような 高い空 降ってこの身も 燃やすまで 生きながらえて 高い雲 そんなに泣いた 夏の日が まだに残って 焦がす雨 言うに事欠いて 仕舞いには 泣きだしそうな 高い空

ないしょばなし

なんにも言わないよ だれもに言わないよ だって頭の中も 心の中も きっと誰よりいそがしい わかってもらえないことは 絶対に言わないよ ただ君にだけ伝えたのは この世でいちばん大切な ないしょばなし

恋の渚

冬のバス ひとり凭れて 誰も降車ボタンを押さないから そうね いつまでも揺られているわけには いかないから 自分から降りるわ 駆けたグラウンド 並んで渚 探してもここくらいじゃないかしら 青春の隣に海があることを 外から来た人は綺麗だと言うわ ざわと…

無いという彼女の声がする

声の出ない数日を経て 彼女は落ちこんでしまった 気分ではなく 風体から物理から 沈みこんだように見えた 地平は抑々平らではない 声の出ない数日から 調子の整わない数年を経て 彼女は 目が座ってしまった 兄弟が指摘する 久しぶりに会った時にはもう 純朴…

わるものの城

装丁ととのってはいないが 気位は高くあるらしい どうせうごめく 深夜の城 そのうちは トロイもおどろく 種仕掛け もうお休み いい子はお休み あとはわるーい奴らで 遣っておくから 廊下にはずみ 遣いも迷い あしたを待つことなく 風波に消えよう

恋とロンド

相容れないけれど 降ってしまったからには仕様がない 苦手にしていた 人との交わり 音の極み どうして同時にこなせよう 恋のふりした あめあらし ロンドに聞こえる うごめき 誰も指さして笑わない かわりに すっと消えてゆく 傘をゆらして 長靴はねて 歌いな…

羽化

溶けてゆかない貴女の羽 初めから分かっていましたと 言えば格好はつくけれど 身体の芯まで触れても 心や 浸らせてはくれない 貴女の羽 流れる水に逆らいながら 移ろう時代に寄ってもゆける もう捕われて離れないのに 此方は 此方だけ 見えもしなくなった け…

H.T.M

あなたは気づいているでしょう それにも気づいているからね 私の正体など さして重要ではない それよりも 生まれてこの方飼っている 恥の概念を 処し方を 教えてくれるなら 金も払うし 身も投げる どうせ知らないんでしょう だから あなたが気づいたところで…

痞えた生まれてすみません

生まれてすみませんを喉に飼っている いつでも吐き出せるし いつも痞えている 誰にも責められていないのに 謝るのは 失礼だとして 嫌われたとして それでも止められない 症候群に似て また痞えて 私が吐く言葉 食べたもの すべてに混じりこんでくる 本当にも…

S2

雪解け水が満たす川 馴染みないのに懐かしい もう聞こえてくるようだ 異国だった調べ 会ったことのない子リスが ちらとこちらを見て ささっと隠れていった 森の先 大きく流れでるまで 続く川 歴史の痛みをうんと知っても 変わらずの流れ どうしよう 知らない…

fancy

かわいいノートがほしくって 1年以上待って やっと来られた キラキラしたお店 迷子になりそう もう大人なのに あこがれた日を覚えてる ずっと胸に持ってる たくさん並んだノートを見て うれしくって しばらく眺めてた 明日にはもう来られない 都会はいいなあ…

時を数える人

不幸だろうか 時を数える人 追い立てられてもいないのに こちらから臨む人 律儀だなんだって 時を数える人 曇りのち雨を知らされても 構わずにいる 明日にはどうせ皆わすれる だけど必ず覚えている 時を 確と数える人

ペリカンのなみだ

まだこどもだったから どうしてか せつめいできなかった すいぞくかんでみた ペリカンのなみだ でもみんな みていないっていう なみだながしていた そのまえに ペリカンがいた それを だーれもしらないなんて おかしいなあ

罪の世

罪を負ったような気分に なったのは何故 誰も何にも言っていないのに 聞こえるのは何 どこから間違ったか 数え辿るけれど これだけの記憶を持っていても 足りないというのなら 因果は前世から 来ている

稀な気分

指の先がふやけてきたら いよいよだと思うのよ ただ長風呂にあてられただけで 何を浸っているのかしら 生命が終る予感は 毎瞬どこにだっているのに 気づかないつもりだったのかしら 熱が上がってくることは 誰にでもあるものよ 自分だけ特別のような気分にあ…

夢をやめてしまったわけではないのだけれど

夢をやめてしまったわけではないのだけれど 年の半分ほども臥せっていれば 嫌に気づく できうることなど ほんの僅かだ なんなら息をするだけで 手一杯のうちに 閉じるだろう 生きているのに 予感がする 夢をやめてしまったわけではないのだけれど 年の半分ほ…

床の横

明日から通常どおりいこうとか 身体の調子だけは そんなふうに計画だてて持っていけないから ただただ祈るのも虚しくて 意気込んでもダメだった時がきつい 人が一生のうちで ほんの数回経験するかしないかという状態を 常に抱えている気がしてね これも選ば…