おとのは ことのは

詩と曲を書いています。

2021-01-01から1ヶ月間の記事一覧

許し

ただでさえ苦手な 狭い後部座席 煙草のにおいが充満して 荒く揺れる 吐き出しそうだって 言えなかった いつから はじめから? 苦しいなんて 言ってはいけない人が この世には幾らかいて 自分もその1人だと 思いこんでいたのは 大人になっても変わらないのね…

ふらつく船着き場

船が着くころには その少しばかり前 港の気配がするころには もう香っているのよ 気が違う 明らかに気が違う 本土生まれは知らないでしょけど 血が喚く しずか血が喚く 鮮やか青に紛れるのが まぁ上手いこと 船を降りる時は 覚悟が必要になる 見送り迎えて …

予見の子

じっとしていられなくて 駆け下りた坂 何年か前に転んだ記憶も 飛んでいた 空が曇る 地が揺れる たとえば誰かが気づいていなくても 誰かが気づいているもので 空想は伝えづらくって 切らした息 何年もかけて築く記憶を もう持っていた 空が落ちている 地が割…

川渡り

船頭多けりゃ多いほうがいい 川渡りは難儀 手も荒れたろうから なんにもしなくていいからね ゆっくり揺られてお行き 淵に来て怯えるんじゃないよ 川渡りは善悪を 越えたものなんだから 考えなくっていいからね きっと容易いお導き 喧嘩っ早い兄ちゃんも 川渡…

anti

あなたのことを許してしまったら 私が居た堪れないわ なんて自分勝手な子でしょうか けれど生まれ落ちたその故を 辿れば責めたくもなるものよ ただ電車に飛びこまないでいるだけ 本当は 小さな心が泣いているのよ あなたの言葉を取り置いて いつまでも憎んで…

夢にいる

天文に身を置きたいと 思ったことがあったものです 汲み解くよりもむしろ 迷宮に入り込んでいくような 快感を欲したものです 心は空想に満ちて 科学的な思考とは 掛け離れたところにおり 数学の類も苦手です ただ星を見るのとは わけが違うのだと知りました …

きょうに遺言

ねむっている間に ずいぶんと時がたってしまった 君はわすれてしまった? それもむりないけれど 憶えててくれたらいいな なんて独りよがりね いまは何時 もう夕餉はすんだかしら たとえばいきている時代を 違えることもあるでしょう ねむっている間のことは …

甘味のうた

喉元すぎて 暫く経って もう忘れてしまった頃に 本当の甘味は そうやって味わうものよ 云うは易いけれど それはきっと 椅子にもたれ揺らすような人が いうことでしょう まだ早いわ いいの今 平らげてしまいたい じわと異国の味がした 昔読んだ童話と 無理く…

定時報告

子守唄も持たないので 己で紡ぎます それも面倒になったら もう目を閉じます 幸い寝つきはいいもので それは白昼も変わらず 悩ませるくらいです 蜂蜜を入れたホットミルクを飲んで 余分な金はなくても それくらいはできます それくらいでいいと 念じるくらい…

愛の不讃歌

愛が死んだ時に 私も一緒に果てればよかったのよ どうして気づかなかったのかしら 逸した時が ただ残り続けるだけだって 靄がかかった緑の電車 中途半端な終着駅 名を体で表してほしいわ 今なら何にだって噛みつける 手折れそうな体のくせに 美しく咲くこと…

揺られてゆくなら朝がいい

澄んだ朝日を見たからとて 救われるわけじゃないでしょう もしそうなら 呑んだくれは全員幸せになれる 無理して起こした弱い背を 6時の汽車に凭れさせた 多摩川越えれば日も昇りきる あなたどうしているかなんて 昔の歌ではよく 夜辺に聞いたものでしょう …

cocktail

名前も知らぬ酒注ぐ 洒落た店は嫌いだとあれだけ言ったのに 口付けるだけでいいなんて 正月じゃないんだから そうよ 子どもじゃないんだから 話は足りないくらいがいいわね もう出ましょう 居心地の悪さより 何より 外の空気が吸いたいわ 戻らない命を唄った…

参道に2人

街はイルミネーションも終えて ただ冷えるだけの日を 少しくらいの嘘がないと 一緒には歩けないわね 体温を感じられない場所にいる時は 恋しいで済むことが 同じ巡りの中にいる時 どうしたって苦しいが来る 洒落た通りは苦手よ だからってすぐには帰れないけ…

I was born, but...

おさな手をひいた 大して大きくもない 今思えばその手は 必死で守っていてくれたのだろう 儘ならぬ日常と 穢ればかりの世 今から慈しむことは できないし しようとも思わないけど 貧しさなど気にも留まらぬくらい 胸の痞えが大きく重く 今思えば何とでもなる…

夜半の情話

夜半は降りてきて 心食い散らかし去る 解れた服 行き違いの情話 儘ならぬ世を教え いつかこの荒れた手を 握りしめてくれる人が 現れるだろうか 無償の愛に触れてこなかった 三つ子の魂 来世まで引き摺るよ 永久は降って湧く ものではないのでしょう 縫った先…

Over the "rainbow"

影ができることの尊さを説くけれど 皆まぶしさに目眩ませるから 世の常ね 嘆くも馬鹿らしい 腹に落とすには難い 虹が架かろうが 誰が喚こうが 代わり映えなき六畳に戻り来て 寝静まったことも 誰も知らない 爪の皮剥く 子どものような癖が抜けなくて ステー…

暗がりに住まう

汚い言葉を吐いた後は 小綺麗な歌でもうたっておかなければ そうやって少しく飾ったところで 心が休まるわけでなし 嫌われたいの 許されたいの 力任せに愛しておくれ 暗がりにいる身には ふわふわ浮いた人々が 眩しくあっても 疎ましく浅ましいと 言いたくな…

ぶり返す慟哭

さして変わらぬ背になって 虚勢だけ張る老い耄れが なんと虚しい生き物に 見えてくる暮れもあるもので 不孝者呼ばわりは 好きなようにしてくれ それで気が済むのなら 幾らでも詰れ 当たり散らしたその的が 格を持たぬと思っていたの そんなことも考えていな…

ぶり返す慟哭

さして変わらぬ背になって 虚勢だけ張る老い耄れが なんと虚しい生き物に 見えてくる暮れもあるもので 不孝者呼ばわりは 好きなようにしてくれ それで気が済むのなら 幾らでも詰れ 当たり散らしたその的が 格を持たぬと思っていたの そんなことも考えていな…

悪い夢におやすみ

悪い夢におやすみ 白い羽根の遊女に 連れられていった それはもう現世ではないのだから 悪い夢におやすみ 蟷螂群れに混じり 何を喰らったの それはもうあなたではないのだから 悪い夢におやすみ 胡蝶の伝説に 何でもかんでも擬えて 呪われてしまうわ これが…

動機と鮮明

どうせ愚かな身ですもの 腹が減ったか 気が晴れぬか 別のつかぬ無念 聞き覚えない町に 自分で越してきたくせに 馴染めぬことを人の所為 朝夕に窓を突き破る 明るい遣り取りが嫌いでね いつか自ずと幸せになれるなど 姫様のようなことは 決して思っておりませ…

雨ざらしの追憶

大波止の安宿で 台風が去るのを待っていた 使い慣れない低いテーブル 窓打ちつける荒風 慣れてるけど 怖いものは怖い 熱があっても 疎まれる家 じっとしとくのが どちらにしてもいちばん 熱はないけどね こんな時まで 考えちゃうのが 考えものだね 降りこん…

母なる海を身の内に

海を好きだと言う人は 大抵 本物を知らないわ 年端ゆかぬ頃から側に 潮香を置いた者だけが 至れる悦よ 渡せないわ セーラー裾を砂に汚し 愛の言葉は憶えがなく 2人宿った岩陰に 見ていた海が それだけが 確かなものであったのよ 2人留めた海だけが そうね …

取るに足らない

幾らでも手にできた富を 手放した人がいたそうな 平屋育ちの憂き身には 理解できないものだったけど 棺から片腕出しておいてと 頼んだ人がいたそうな 結局は怖がられるからと 仕舞われていたそうだけど 何にも持っていないのよ ほら 何にも持っていけないの…

自転と自念

地球は回っているとかいないとか どちらでも構わないわって 投げた歌を もう何年も前に書いた気がするけど 今私たちがこんなにも ぐらつく理由をあなたの所為にしたい 都合よく いいえ、都合悪くなったら 使おうとする悪い癖ね バカと何とかは高いところへ …

手すさびの庭

埋もれてしまった手すさびの庭 あの子の歌がきこえた気がした 草花に詳しくないくせに 此処を居にした報いがきた 武器を手に去った人は 穏やかな縁側を何より好んでいた 片や煮えたぎる そして煮えきらぬ 憎しみ誹りを持った手は ふと風が吹いたとして それ…

You KNOW, All right, All right.

あなたは知っているでしょう 今胸にあるおもり 帰りの電車で 家についてからも ベッドの中にまで潜りこんでくる 痛み苦しみと格好つけて名づけるほどじゃないけれど 詰まって離れないものが いずれ薄れてゆくことを あなたは知っているでしょう もう向こう側…

伝えておくわ

砂時計は気づけば 擦り落ちていて 誰彼問わず終えるもの そうね 尊き天を描かなければ 遣り過ごせない苦に満ちて 歌を突き上げ 指交わらせ どうか安らかをと 願うても 此方は思い描くよりも 耐え難い世界よ それでも 伝える術ないから 偶に 生まれかえってゆ…

眠りつくときには

髪も乾かさんとウトウトする子 まるで道化と見とれるよ 昼間の喧騒も気まずさも 飛んでいくわけでなし だけと少し薄まって いつか愛されますように 弱い体が治ることなくても 少しく強く生きられますように あとはもういいの 揺り起こして髪乾かして なぞれ…

冬よ

春は 呼ばれそう高らかに 匂い増してくるわ 誰も彼も愛すその気を 謳歌して惜しまれて 片や 冬はもう耐えるだけ 辛いものだと思われて 早く過ぎるよう手を合わせ 結ばれやがて風に飛ぶでしょう その気も削がれても まだ居るための日を 誰かが愛でたなら 居心…