おとのは ことのは

詩と曲を書いています。

2024-04-01から1ヶ月間の記事一覧

稀な気分

指の先がふやけてきたら いよいよだと思うのよ ただ長風呂にあてられただけで 何を浸っているのかしら 生命が終る予感は 毎瞬どこにだっているのに 気づかないつもりだったのかしら 熱が上がってくることは 誰にでもあるものよ 自分だけ特別のような気分にあ…

夢をやめてしまったわけではないのだけれど

夢をやめてしまったわけではないのだけれど 年の半分ほども臥せっていれば 嫌に気づく できうることなど ほんの僅かだ なんなら息をするだけで 手一杯のうちに 閉じるだろう 生きているのに 予感がする 夢をやめてしまったわけではないのだけれど 年の半分ほ…

床の横

明日から通常どおりいこうとか 身体の調子だけは そんなふうに計画だてて持っていけないから ただただ祈るのも虚しくて 意気込んでもダメだった時がきつい 人が一生のうちで ほんの数回経験するかしないかという状態を 常に抱えている気がしてね これも選ば…

罪のこども

のどの奥に痛みが走った 臥せても起きても 世は昏い 愛がそこにあるのを前提に 嘆く人たちは異星人 あぁ僕が 変わり者の側だった 綺麗に言うな 変わり者で済めばまだ のどの奥は酷くいがった 毒も薬も似たようなもんだ 愛をうたう人が嫌いなら もう追い出さ…

春の世に隠れ

また言うことを聞かぬ肢体が 憎くなり されど我が物 切り離すことできず ただに嘆いて 春の日を暮らしてしまった この陽気につられ 人々は花を愛で言葉交わして 日の下に騒ぐのだろう また虚しくなる距離を捨て もう知らぬ世のこととばかり 念じて念じて 食…

閉じゆく季節

君恋しという齢はもう とうに過ぎてしまったか 身体弱気は幼いころからといえど 此の頃はもう 思い通りの日のほうが少ない あぁ痛むなら 引き換えにくれないか ほんの少しでいい あぁ熱なら 恋の熱さをくれないか 馬鹿のように火照っていい 君恋しと詠うのは…

春気に障る

春の陽気が 少しばかり苦手に思える質 桜酒飲みは論外として 情緒すら苦しくなる質 突き詰めれば もう儚むほか なくなってしまうから あまり考えないようにしよ ということを考えてしまう 堂々巡るうち寿命もくるもの 誰のせいでもないけれど 昏きに落ちるも…

声が嗄れているのに ある日 気づいたけれど なんてことないさ すぐ治るだろって 思ってた だって夏も秋も 憂鬱に青春に 相反するすべてが 押し寄せた年だった しばらく経っても 声は戻らなくて あんなによく喋り歌う子が 黙りこんだ はじめてのことだった 女…

つむぎの歌

ひとつひとつ 数えてゆくように 細い弓を 編んでゆくように 誰にも見えないところで 泣き泣きに手動かす 確り者の 伝え聞き つむぎの歌 うつろなころは 皆 春気に浮かれ とりのこされた ひとりぼっちが 誰にも見つからないように 泣き泣き袖ぬぐい 正直者の …