おとのは ことのは

詩と曲を書いています。

2022-07-01から1ヶ月間の記事一覧

花火散り時

桜に始まり 花は花は 散り時が美しいと申します 国柄地柄 もしくは願望か 重ね合わせの戯言か 不意に上がった花火を聞くに 大輪を思わせる 音が音が ずしんと地から足からきて 夏の悲哀を伝えました そうね例えばそれが火でも 花は花は 散り時が美しいと 昔…

土曜暮れより

酔い明けに日曜は いつの間に暮れてゆき 普段とは違うような節に 5時の鐘が聞こえた 弱い酒にやられた情けなさが 夜になって染みてきて ふらつくにつけて あぁ昔は 飲まずとも酔っていた 世界が揺れていた 怖かったな 強くなったもんだな なんてね 強がって…

流しに乗せられれば

なるたけ生れ落ちたままの姿で ずぼらの言い訳に 化粧もせず飾り立てず 暮らしてゆきたいのだけど アナログ人間を自称して こころのうち それと話をしたいから 現代社会にもついていけないな かといって暮らしが立ち行かなくなるのは いよいよ精神論ではなく…

はるか遠い夏日に

幹に触れた時に 湿った中身への好奇と ささくれ立った痛みが 指先からきた ほんの100センチの世界から 見るのは空の上 根のさらに下 穴が開いていて 蟻や知らない名前の虫が出入り 陽が翳ってきて 帰るまでのカウントダウン もう少し凭れていたいな 潔癖以前…

アンチララバイ

ララバイ 愛しいあなたに歌ってほしいなんて おかしいかしら 子どもみたいなふりをして 今日だけ甘えてもいいかしら 埃たまった部屋も構わず 通り抜けてゆくくらいだから 苦し紛れの嘘も病も 抱きしめてはくれないかしら ララバイ 愛しいあなたが歌ってくれ…

初頭のひと節

いつまでも垢抜けない娘ね 黄色のキャンディーを目印にお行き 獣も狩人も敵じゃないだろけど 雷だけは気をつけな 腹が減っては戦は出来ぬ 腹一杯でも体が動かぬ いい塩梅を探すのが 旅する掟ってもんだろう 粋な男は居ないかね 街に出たなら会えるけど あん…

帰りつくことできたなら

後部座席で臥せていた たばこの煙が充満して 窓を開けても消えなくて 怒られませんように 無事に帰れますように 誰かの肩に凭れるのが 愛されるより羨ましかった いつかのバス 横目に見た人を思い出して 笑われませんように 家が少しでも平穏になりますよう…

文披月の送り

くちびるにそっと触れたけれど もう冷たかったのよ 赤いライトが回って 宵闇の中に目まいがしたわ 爪先もなぞってみたけれど もうしなびてしまっていて それは私のほうかもしれなかったけど 今となっては分からないことだわ 誰かと居れば紛れるでなし 時が経…

雑多なうた

物語にもならない類の苦しみが 今日も日常の全てだ 誰の目からも手からもこぼれる 私の呼吸は乱れてゆくだけ あぁ神様 幼い頃から 何度唱えても恨んでも 答えてはくれなかった神様 もうこの世界を全て捨てたいと 極端な事しか浮かばんのです 生まれ変わりに…

愛に気づけない

10年も経って 気づくことがあるように 一生終えても 気づかないことがあるように あなたが付けていた十字を ふと思い出して 写真をなぞって なんて愛おしい時間だったのだろうと 話す声 横顔 歌っていた空間が 戻らないものが全てでも その中でひときわ輝い…

夏の寝床

温い布団に入りなさい 日に当てておいたから 昼間の熱りを冷ましたら もう眠りなさい 夜は怖いものと覚える前から よく眠る子で良かったわ ただし敏感に任せて 世を嫌わないように教えたい 偉そうに講釈垂れるのも 気が引けるくらい純な子よ 泣き喚く時の声…

こちらへ呼ぶ あなたを呼ぶ

今あなたが彷徨っているのは 生と死ではなく 黄泉と現世でもない こころのうちの こころのうちの あちらとこちら 精一杯耐えて保っているさまが わたしには見える 今あなたが闘っているのは 病でも闇でもない 孤独や痛みでもない こころをたもて こころをま…

末子のひとみ

波には慣れた 幼な頃から 水面を水平に見て 揺れていた なぜに離れた 心寄せた兄は 頭撫でてくれた 記憶だけ残して 行くなゆくな 歌えど叫べど 波の前に 声は幼く 死ぬな消えるな 呪文如きでは 叶わぬことなど 千年前から 波に伝えた 童謡たちも 知らぬ調べ…

十字を切るにはまだ早い

舟を降りたのよ 誰も知らないでしょう? 荷に紛れ 森に辿りつく迄 必死で走ったのよ 倒けて擦り剝いた 足を庇って 霊も露に 生きていたのよ ねぇ ノア 知ってるかしら 雨も注げば 愈愈だけれど 十字を切るには まだ早い 舟を追ったのよ 誰も気づかないでしょ…

枯れるなら朽ちたい

恋を綺麗なものと呼んだのは むかしの物語でしょうか そんな大層なものじゃないでしょうに 枯れてしまうのなら その惨めさに耐えきれず いっきに朽ちてしまった方が ましよ あなたも女ならわかるでしょう? 頭があちらに持っていかれる 快感を覚えてしまった…

駅前の夕

駅前の空は 古びているのに 薄オレンジを綺麗に映す 何にもない故郷と 大都会のビルの どちらともつかぬ 不思議な感覚がある とりあえず写真に残してみるけれど そういうのじゃない気がしてる 喧嘩別れも その日暮らしも 何だっていいやと一瞬思える 半端に…

遠い渚で恋をして

許されぬのなら 遠い渚で恋をして 擦り減らした靴も脱いで 水辺に凭れましょう 子どもたちのチャイムが いよいよ過ぎ去ったら 日暮れも待たずに 踊りだしましょう 許されるのなら 見ているのはカミサマだけ 汗に濡れたまま 遠い渚で愛を交わしましょう うた…

野分のあと

野分のあとは 溜息つく間もなく 稲を拾い また整える 空蝉の最後 付き合いきれぬけたたまし また秋の祭りまでに 踊りひとつふたつ覚えて 子にも言って聞かせよ 風向きも実りも 如何ともし難いと 野分のあとは 肩の力が抜けるけれど どれだけ大らかにあろうか…

讃美と病

讃美歌と距離が欲しいのは 嫌いだからではないのです 入りこみすぎて苦しくなるのは 教会に足を踏み入れた時と一緒 きらきらステンドグラスに見惚れ パイプオルガンに弾むような 信仰の真中にない十字を 格好良いものと思えるような そんな神経にないのです …

3号線の自転車

国道3号 蒸す夕に 必死で自転車こいでった 千早の手前で赤空が 覆ってきた 苦しいよ あても無いのに ふらふらと 急かされても無いのに キリキリと 暮れる寂しさ 闇明かりの導き まじり交じって 息ついた夏 海の気がするよ どこまで走っても 追ってくるのか …

恋の包容

皆の賑やかを離れて 1階の庭に出ようとした 私は夢想に長けているもの 少しくらい浸ってもいいじゃない あなたはそっと近づいてきて 後ろを取られるのは苦手なのに 優しく名を呼ばれたら 文句のひとつも言えなくないじゃない 何をねぇ話したかな 肝心なとこ…

外へと暗がり

名を知らぬ木が揺れていた 横断歩道の先の家 金持ちらしくピアノを弾いていた 田舎町にそぐわぬハイカラな調べねと 妬み嫉みで思っていた 夏夜は嫌でも覚えている 暮れるのに時間がかかる この国でいちばん 蒸されて長い夕が やっと閉じたころ ひとり歩いて …

まかせ呪い子

呪い子は 夜に怯えることもない ただに生きるだけで 痣も増えるよ 鐘鳴らしもない もはや現世では 己の力で 眠り刻を知る おいでおいで 呼声は耳心地よく ついてゆきたいよ 夢日中でも それは奇妙なことでしょう 誰も気づかず世は進むか もしくは事変と片づ…

弱き夏越

夏はじめの蒸しに 越す水浴びに 移り変わりを思い乍ら 浸りたい今日この頃です どれだけ頭を働かせても 日々働き食ってゆくには 気力体力が肝要なのだと 思い知るばかりです 均衡を保つだけで その振りだけでも 疲れ果て 何も成せぬ身が また手折れるように…

降れ降れ ことのは

降れ降れ ことのは あなたには何も解らぬことだもの 暮れ行くに懸けて川渡り 危ないよ 何れにしても 恋焦がれても遠きもの 求めて朽ちるなら 仕様もないことと 笑えるかしら 降れ降れ ことのは 地にはそれしかないのだもの 願いを懸ける人もおり ささくれよ …

たとえば私の母が

たとえば私の母が 人より少し賢ければ 向こうと此方行き来するような こんな子を導けたでしょうか たとえば私の父が あと少しでも優しければ 風が吹いても怯えるような 敏感な子でなかったでしょうか たとえば私の生まれた世が もう少し間口広くあったなら …

時の造作

嫌な気にあてられて寝苦しいわ あのコの孤独を晴らすための 八つ当たり気が大きくなった 私はそんなモンになるまいよ 人の中にいれば幾らでも あれや此れやとあるものを すっかり忘れていたからね たまには市井に行かなきゃね 取り除くことできないまでも 哀…

夏越咲

よくも今まで生きてきたものね すぐに詰る喉の重み見て ねぇ必死で生きてきたものね 誰彼と気づかれなくとも 夏越は恙なく済み 恋しがるほどもない熱が 天から天から 降るのです 貴女の命を淡く照らすため そうねこれから生きてゆくならね ひとりぼっちを見…

なかまはずれのたましいも

もういいや 石ころ蹴飛ばしたいけど それもないなあ 硬いだけの地面 つまんない話がつづいてさ それにも入れなくって ふくれた 不機嫌も知られたくないよ なかまはずれの夕惑い 帰るなら今 とどまれば何か 楽しいことが待つ魂を 信じてみたい そっぽ向きたい…

揺れ動く夏

飛んでったボール探して 砂浜に足取られてさ 汗は落ち 陽は真上 泣いたりはしないもんね 防波堤の向こう 叫び声はいくつも来る 分からないから 君がいるかもなんて夢も持つ 遠ざかれば走って追え いつの間にか翳るまで 淡い校庭の陰さがしも 喉にしみる冷た…