おとのは ことのは

詩と曲を書いています。

2023-05-01から1ヶ月間の記事一覧

意地悪女とふと来た娘

姿勢の悪い娘が なぜか遣わされて来た 呼んでもない者に限って この屋敷は 丁重に持成す癖がある 気働きのしない 此方苛立たせるために 来たのか こんな季節外れに 小庭の果を 盗んだ罪を 擦ってやろうか そんな企みも 沸くというものよ 昔ばなしに愛される …

辿りの日行き

暦たどれば 日常の汽車ゆれても 大した造作ではないものね 指先を握った人に限り 暫らくは会えぬように なっている 明日待ちなど 恋せよ乙女の 歌に従う積りもなくて ただ今日を揺れている 明らかに弾かれて 痛んだ指を隠している 暦すぎれば 秋の果を捥ぎ …

熱が離れぬよう

啄ばんで また一夜 こんなおなごに なるつもりもなかったのに 汗拭い もう一夜 貫くのなら 離れぬを約束してほしい 言葉少なにしないで 腹の底から不安になるから 余計なこと言わないで 求められていると思い違うから 馴染まない星で 一所懸命に 縋らせて 傷…

道端の夏越

訓練すればある程度のことは なんとかなると知ったあとでも 夏越の知らせに 俯く もうそろそろ季の情緒に酔う 後ずさり 癖になり 宵越しの 悩みばかり まき散らす勇気も 使い果たす豪気も もっと人とは 一生分かり合えそうにないわ 引き返して 汗拭った 夏越…

あなたがひとりでいる理由

月ばかり見ていたから 今ひとりなのよ あちらのことばっかり 考えていたでしょう? 何も悪いことじゃないわ かぐや姫の思いに似て 馳せたくなったのよね ただ故郷じゃないだけで 求めるその心は 理解できるもの この地への違和感は あとは余所へ晴らすしかな…

七つ数えの子

七つ数えの 横断歩道 振り返りは無しにしな 軽く呼んではいけない神が 簡単に歌になったもんだ 子等は知らずと 口遊むのさ どうせ知らぬと 甘く見なんな 七つ数えば 渡ってよしの 然し身の確かはどこにも 甘く菓で誘う積りの神が 引き戻してくるに負けるな …

魂の行き違い

生まれつきの 魂の行き違いさ 冷たい水に 午前1時待ち 春も暮れて 夕風にやられた その高鳴りと虚ろのまま 眠れなくなった 明日の務めも きっと果たすさ 必要があれば 人間らしく生きる素振りも できるけれど できるけれど 本当は巣食う 魂の行き違いさ

散るまで情歌

気紛れしょうか もう動かない 血塗れの夢 呪い子の情が 移り 移り気 街は忘れて 一生此処で暮らすは難い 散るまでの情歌 通り桜は 一気に逝った 見送りたかった ゆらり 立ち眩み のつもりが疾に 消えているかもしれないだろうが 気紛れ神さん 簡単には 呼び…

初夏と病のはじまり

眠り落なよ もう 明日のことは 明後日くらいに考えて 青々と通りは 息吹の頃 嫌いになりたくないから 避けたんだよね わかるよ 僕もそんなだったもの 何か買ってくから 適当に食べて 何もしなくていいし 落ち着かないなら話そう そして気にまかせて 眠り落ち…

求めつづけた日

生きてゆけるという実感を 求めつづけた 夕刻の 皐月の風にいるだけで 思いこみたかった 生きていていいという許しを 求めつづけた 思春の 校舎を後にするだけで 責められている気もして あしたには 上向かないまでも 呪いがとけていないかな 念じても 取り…

壊された娘

壊された娘の 宵のうちは だれにも云えぬ行脚があるのさ 離れ 手立てもないだろどうせ 鹿威し 遠鳴り のように勘違い 壊された娘の 心の内は だれにも知りえぬまま宵に消えるさ 爛れ においの残る畳は 遣らずの 雨鳴り のどに詰まり 壊された娘の 頼みの綱は…

剥がれる夏

あなたが連れてきた街でしょう 孤独に酔わせないで 其処此処に溢れた恋歌を 今さらなぞる積りもないわ 行き交う個体に寄る辺なき 明日には焦がれてしまうかも 夏は、夏は そうやって 知らずに剥がれてゆくものね 通り 一本先は 裏通り 一寸先は 皆迄も あな…

溶けるちよこれいと

真夜中のちよこれいと 舌先にとけて ざいあくかんも 知らんふり かれんだーには 書き込んで満足の あれこれ もういいや 横になれば ぐったりと そのまま起きない 動物みたいに 最後は最後はって 唱えた若気の 至って今 正常をいきて 溶け終えたちよこれいと …

風まやかし

時が経つことを 風酔いに知る 季節すぎる様に うっとりせずに ただただ 怖くもなるものよ めぐるなら 戻らぬなら なおのこと 大人にはなれないな 手遊びもやめないな それなのに 終りだけ見える 呪いはなぜ 時が経つことを 遠巻きに見る 季節うたう人の 余裕…

ぶりかえす

いとおしさ わすれかけた 感覚を呼びおこす あなたの手が ほんのすこし 触れた ふれた それだけで 見おとした いくつもが わきあがるよ 夜も更けおえた あしたには いや今日か はなれるとしても 記憶と想像だけだった あなたの手が また触れた もう今生で 止…

記憶をあるいてる

バス停 ひとつとばしのゆううつ どうせ置いてかれる 蹴った石ころ 思わぬほうに飛んでって 涙目 知られたくないなら ひとり歩き どうしても袖つかみたいなら ほかの恥ずかしさはがまんだ ノートに書きなぐったグチが 晴れはしないけれど 薄まる空 せまい世界…

日々にすむ子守歌

聞きおぼえの子守歌 うつろな節に変わってしまう こんなんじゃ寝た子も起きる はやく手繰り寄せて記憶 服がみだれても気にしないさ どうにか守らなきゃいけないいのちと 向き合う一瞬一瞬が あなたもいつかわかると 母のことばに 捻くれば まだ腹に落ちてい…

まねごと

ないしょばなしは すこし距離をとって だれにも見られちゃいけないね 階段あがって 屋上のドアの前 だれも来ないからだいじょぶね こいのはなしが 苦手なのはしってるけど だれでもなく君にいいたかった はじめてはぜんぶ 君にいいたかった わがままでもいい…

終着

思い描いた未来の中に いないことだけは分かるのに もう立ち消え時を待つ身とは こんなはずじゃなかった こんなはずじゃなかった 外れくじを引いた それに浸かってボヤかした付けだ もう明日には 朽ちてもおかしくない身だ どうしよう どうしよう 最後の一葉…

波音は夏待たず

未来を捨てて 貴方も振り切って 町を出たのに 青春も忘れて 手紙も焼いて 帰らぬと決めたのに まだ夏も見えぬうちから 耳に脳に 波の音がザっと 来る来る 緩やかな浜辺ではなく もっと酷なほど 沈みこまれるのかと怯えるほど 波音は夏待たず 親の言葉は早く…

辛み

月見のときに 先に帰ったこと まだ忘れてない こちとら何年何十年 待ったと思ってる 執念深いおなごだと 詰るのはやめてね 馳走を残して 私はまだしも 去るものだから 月見の夜に それはないでしょ 何年何十年 待ったと思ってる

海を呼ぶ人

そこに海があることを 恵みだと祀る人 食う寝るところに住むところ すべて水流れが中心にあり そこに海があることを 祟りだと嘆く人 決して敵わない力を持つ 怪物も事実も飲みこまれてゆく そこにない海を呼ぶ人 美しいと讃える人 たまに見る分にはいいけれ…

全部月の所為

月の所為にしてしまえ どうせ心の中だけの 誰も知れない痛みなら 許されてもいいでしょ 女なんだから 時代に反しても 狡いと詰られても 貴方の 高みの見物が 気に入らないの ちょっと生意気おもうくらい 許されてもいいでしょ 全部月のせいよ 貴方が遣わせて…

見舞

白いベッドに横たわる そのさま 足が竦んだわ あなたは生きているのに 生きているのに まるで 何があったと人伝に 思いの丈は察せるくらいには 青春のとき 話したことを 覚えているくらいには 手を取ることも 見つめることさえ 怖くて怖くて 弱らないでこれ…

彼女の声

彼女の歌声は 胸に痛かった 僕の妬ましさを 浄化するか 鐘鳴くような きらきらと すればそのほど 此方の毒を強めるだけさ 自分では 病み上がり 宵待ちと やな顔するけど 此方にすれば 羨ましくてならないさ 彼女のコンプレックスさえ 飲んでしまいそうな 声…

雨粒浸る土のにおいは ぼやぼやと集まって 知らせてくる浄化 好き嫌いなど関係なしに 虫が突撃してくるから こちらもぼさっとしてられない あなたに教えてもらった 本は読みかけ ほんとは不真面目 だって土や雨を見ている方が 知るということに沿うじゃない …

いつかの夏

名を呼び捨ててほしかった 大事にしなくてもいいから ここにいてごめんなさいを 払ってくれる気がしたから 似たり寄ったりの恋愛ばなしに 沿うつもりもないのよ あなたの邪魔にならないくらいに できれば邪険にされるくらいに よく来たねと抱きしめてくれる…

噎せる夏と坂道

思い出してしまった 噎せる夏のくるしさを 逃げられない町には 夕焼け小焼けも 遅ればせながら響くもの とらわれてしまった 考えはじめたら 抜け出せない景色 頭より大きく居座って 季節逆行お手の物 宇田川町の先には 盆線香のにおいに似た店が いやでも 蒸…

ひとときの知

緑の見える 6階の食堂で 邪気をはらって ただの息をつきましょう 明日には 見られなくなるかもしれない もう知った 世が確かに変わること ビルも見える ふしぎな景色に 温かい味噌汁を啜り 母など思うふりをして 明日には 遠ざかるものたちばかり 今さら 世…

風の少女

知らぬ言葉を話す その節が耳に残る タータンチェックに身を包み 少女は軽やかに去った あぁ夢だったのかと 思わせるくらいが丁度良いから 女は美しく生まれる 此方の思いなど 置いていってくれ この胸の内は 誰が知るかで 丁度良い