おとのは ことのは

詩と曲を書いています。

2023-01-01から1ヶ月間の記事一覧

雨のにおいの金曜日

憂鬱は月曜に来ると 昔そんな歌があったけれど 雨のにおいの金曜は 私をあちらへ連れてゆくわ もう抗う気力も無くした頃を 狙って来るなんて卑怯よ そう思わない? あぁそうか貴方は そんなに暇じゃなかったわね いいわ 1人で連れてゆかれても たとえば1人で…

折れる凪

うれしかったのよ 凪が なんでもない さやと波おとが はしゃぎたかったよ ほんとは 歩くのもやっとのからだで 疲れるまで笑って 少し歌って 君の待つ胸壁まで もどるから うれしかったのよ 凪が 凪が終ることも知っているから それまで見ていさせてね

鬱屈の真中

生きている そのことがもう 鬱屈の真中 昏がりが流行れば 天邪鬼が発動する もういい私は病んでない どうせ誰にも分からないよ 理解進む時代すら憎くなる そんなんじゃないんだよって 叫びたくても 嘆きたくても 格好つけてやる 死ぬまで 生きている ただそ…

光りから

風になびく そのやわらかな髪を 妬ましく思って 口にも出したくないな 顔も見られたくないな そういう人に限って やさしくて あぁもう私の汚さが 浮き彫りで情けないな たとえば愛されるより こんな感情を持たない人間になりたかった 駅から離れるほど 不安…

恋の種

目立たない人が好きでね 目で追ってしまうものでね 校庭の隅 移動教室の合間 何を見ていたんだろう、をなぞる 背が高くてね すごく目立つのに 人から好かれているのに あえてなのかな ひとりでいるのが 陰にいるのが 気になってね 仕方なかったの 何を考えて…

風の抱きしめ方

浜に出て ずっと眺めて 真昼に泣いていたころは つらい代わりに 逃げ場ない代わりに よくよく知っていた バスに乗り 狭い島を上り下り 酔いに項垂れていたころは よわい代わりに 口出せぬ代わりに 今より知っていた あぁなんて愛おしい生き物 僕たちがどれだ…

神の余暇

やさしい人ほど 潰れてゆくさまを どれだけ見たことか 潰れた者ほど 出ぬ声を どれだけ逃してゆく世か 金稼ぎ 飯を食う ただの寝起きを 人に会い すれ違い ただの戯けを 何故楽に営めぬのか 長らく考えながら此処に居る

弓引くまでの刻

あんたが決めたことならば 何だって従おうと思ったのに 答えもなければ足懸りもなく ただに雨降るだけ 見上げるために其処にいるのか 下向かせぬために導くのか 結局に人々は争うほか 幼子も弓握る あんたがくれるものならば 何だって受けようと思ったのに …

愚かし海町

素直な心は捨ててきた 元々持っていなかった みんな海町に 夢を持ちすぎなのよ 古いフェリーが いつの間に役目終えたんだろ 少しばかり洒落たのに変わっていて 酔わなくて助かるかなと 慣れなくて心地わるいなと どちらにしても文句を付ける そうか此方の問…

夏がはじまる

僕なりの恋を 夏はじめに終えたとき 帰りの上り路は 足重くてさ 辿りつけば 草むら向こう海が待ってる 知ってても 思い出も 鬱陶しくなってさ 君の手紙捨てようか 番号忘れてしまおうか めぐらせたバスの中で 噎せた暮れどき 何も残らなかった恋が 終ったと…

わびしの月

望みが途絶えた日に僕は思ったのさ すべてぐしゃぐしゃに こわれてしまえと 皮一枚つながる月 必死で抑えこむ弓 心などはこうやって しんでゆくだろ 振りかぶって投げた もう追う気力もなく ただただ打たれた球 草むらに消えたかな それも夢で どれも夢で 人…

はざま

いのちの狭間にいるのだと いやでもわかる月の頃 今日は一段病んでいる 我がが思うより耐えている 日あたたかくなれば 人のよろこぶけれど どちらにしても その落差が いのちとりにもなるもので なつかしい歌は 5時の鐘 のふりして ただ夜として 攻めこんで…

応酬

臥せた身の辛くて 何でも許されるなら 法も倫理も要らんでしょう そんなことばかり 生まれたそばから考えていて 正直 年寄りの我が身勝手には 嫌気がさしております 季節は病の そして寛解の 繰り返し また臥せり 責められたことの 忘れられぬ 歌をうとうて…

歌い子

細い目に 光り入れて もうすでに 明け終えている 歌い慣れたあの子は 歌う前から笑っていて かわいいものだと 思った 摘んでシロツメクサ 落とし物かみさまの 日の入りて まだ少しばかり待つ春 歌い過ぎて嗄れた声 あの子はいつもそうさ 無理も限りも 知らな…

日の気宵の気

言うこと聞かん身体が 憎たらしくて情けなくて堪らんのです こんなことしか書けんことも また惨めで 只々 太陽に生き 闇に眠ればいいものを それすらできずに この地がそぐわぬと嘆きつづけて 只々 自分が馴染まぬ存在だと きづくのも億劫です 何も考えてい…

夏熱に追われて

熱を失ってからのほうが 人生は長く 暮らしは続くよどこまでも 田舎町の夏は 蒸して 怒鳴られて 大嫌いだったのに 綺麗がかって どうかしてるな 思い出ばかりが 追ってきて それから逃げるように 大人はこんなに難しいのか 虫に刺されて赤くなるのは 変わら…

変調

あぁ一日がこんなに長いとは あぁ一瞬がこんなに重いとは 繰り返してゆく時計 流し見する日も月も その中に蛆のように潜む 沸き立つ 変調耐え難く どうか贅沢な悩みを前に それもいいねと笑ってほしい 通りすがりは嫌われ前に 知ってももらえず泣きだすもの…

ゆるやかなリズム

紅茶を注ぐとき すっと上がる 湯気が好きで 埋もれていたくなる 明日にはもういなくなる人に ラブレター渡すような無邪気が あぁ 少し残っていて よかったな こそばゆいけれど 紅茶の冷めどきが 読めないな 時間置きすぎて しょんぼりするわ こんな調子で な…

終走

物に命が宿るというのを 幼いころに見聞きした所為で 古い写真を破り捨てること できずにいる 捗らない整理整頓 それなりに慣れた部屋 もう明日には 消えてもおかしくない命と 世の中が そう唱える前から 気づいていたの 偉ぶりたいわけではなくて 物心つい…

戦士の暮れどき

塵も埃もかわいいもので 後にした土のいとおしいくらい 血とひしゃげる肉の におい 呻き 明日には消えてしまえ 俺ごと うつろうつろな 文学好きじゃ 生きてゆけぬから 必死で走っただけ 本当は本当は 生温い平和など 無いこと 知っても 知っても 喉から手が …

汚れたからだが お気に召さないかしら 宵闇 それでも 灯りは確か 言われたとおりに 輿に乗ってきた娘の 先々は この御方しだいね さだまらぬ視線が 気に障らないかしら 灯りにつれて ゆかれるだけの 声がやさしいのは 気を遣わせたかしら 障子の向こうに妖 …

焼け落ちた夏

あなたに会うために 歩いていたのに とぼとぼとぼとぼ 歩いていたのに 起きあがるのがやっとの身を 揺り起こしてきたのに 夏が焼け落ちた もう会えない 街が焼け落ちた もう会えない

西日行きの頃合い

手がふるえていた 君のうつむいた でも此方を窺いながら 触れてくれるのね 西日の返りも行った 東向きの窓 まだ更けない夜を 待てずに潜った あぁ明日は 同じように 目ざめられるだろうか 生きてゆけるだろか ほんの少しの 生きた証しは だれでもない君の手…

歌と彼女

彼女は 歌がそのまま体の中に 棲んでいるような人だった いつもにこやかにしているようで 少し影を孕む様がもう 惹きつけられて止まなかった どうしよう 青春の切れ端に 収めておけたら良いけれど 彼女は 此方の気も知らないで 其処彼処で歌っていた いつも…

繊細の概念

世情は辛く 病んでいることが当たり前のように 世に出すぎた概念が 疎ましくもなる 繊細は ともに携えて 静かしておくものだったはずだ 文字が並び 本が積まれ 時に武器のように謳う者現れれば もう嫌気が差す 取り沙汰されたいわけでなし ただただ生きてい…

月よりの証左

月は裏がえって 気づかずに眺めている 君たちが可笑しく愛おしい暦 連れはまだか 諦めたつもりがいつまでも 遣わせたつもりでどこまでも 追ってしまう この大きな目で 伝手は幾らでも あるようで なくて 送っているのに 届かないたより 月は裏がえって だー…

青空

君が見上げた空青く 僕も隣にいたこと 忘れそうなくらい吸いこまれた 明日にはどこかへゆく青に 勇気づけたつもりが こっちが泣いてしまった 真夏のグラウンドで ゆく日を見てる 季節を見ている 留まってほしい時が 望んだとおりにならないことを 力づくで教…

かみさまのゆりかご

つれない返事に涙ためたの 気づかれないよに帰りつけるかな さびしいとくやしいで 迷って迷って 結局ぎゅっと袖にぎったから負け 自販機の寄り道もきょうは あったかいはちみつレモンにしてね 刺々しいことばが不器用の表れ 知ってるけど きょうは優しくして…

re-cord

長い廊下のいちばん奥には 古いレコード 揺り心地のいい椅子 買った本人さえ忘れてるけれど 勝手に使えば怒られるだろけど 針を落とすの おぼえた おぼえた だいじょうぶ ちょっとだけだよ 聞き知ったメロディーと違うから 知らない楽器の大きな音に 怯えて…

さかさ花火

季節はもう 寒をきわめて ただ探し縋りつく ぬくもりだけに 忘れてしまいそうな 真夏の暗空 どうして今 そのまま浮かんだ そうだ 僕はそういう人間だった 忘れるわけない そういう人間だった 花火は散って うつくしく逝って それを綺麗と讃える人を横目に 僕…