おとのは ことのは

詩と曲を書いています。

2022-08-01から1ヶ月間の記事一覧

夏日

覚えておこうね 蒸す夕に また沈まない日に どこまでも続くんじゃないかって 思いこむもやむなき 西町の夏日 そうよもう半月もせんうちに あっという間に暮れるようになるから 覚えておこうね 蒸す夕に 汗したたらせて帰る道 生まれ育ちの ほんの違いで 暮れ…

捻た空

青かった空は疑いもなくて ただに眺めては辛さ吐きうたう ただね海は 本当の海は 青でないこと 覗き込んで知っている 教室の窓から見えた 空の色受けた青 靴脱いで近づいた 光を受けた透明 そして そしてね 潜り込んで知った 足を取られて恐ろしかった 夢に…

諦めきれない言葉たち

借りたまま 手も付けず本は積まれてゆき 月ごと日ごと 気負えば病み 暮らしさえ儘ならず 例えば苦しむ人いても 其方へ向かう精もなし 例えば呼ぶ声聞こえても 此方も必死の日々暮らし なんと情けのないことか 雑多に追われる日常すら むずかしいのね 悔しい…

力抜けてゆく夏逝き

もう圧迫もない 海の前に立ち 只々呆けているようよ 溺れかけた手を掴んだ人も 産み落とした人も 殴りつけた人も 散ってしまいなさい 海の花 美しく言えば其れでしょう 夏は逝き 振り返りもしないのだから 此方だけ ぶり返しに苦しむ 義理もないわ もう息苦…

追いかけっこの恋でしょう

あなたの生まれ月 雪さわぎ 私は追うように 溶かしましょ 恋は絡み合うだけじゃないわ きっと 追いかけっこのたましいたち あなたの手紙に従い凪 私は波立ちを見る船で 恋は激しさも必要だわ いざね 抱かれたら竦むくせに あなたの言の葉 又の受け売りの 私…

作りもののココア

なるたけ 作りものからは 離れていようと思うけれど 便利が私たちの六感を 削いでゆくこと 気づいているけれど 一度溺れたら癖になるしね 楽を覚えたらズボラなもんね 全部手放して地に立つとかは 極端すぎてむつかしいから ほっとひといき 作りものの 甘い…

愚かな女の、子

どうすれば奴が傷つくとかって 頭の回らない女に 育てられた 育てられた 順調でないまま 春秋暮れて 見切りをつけなよ 義務なんてないさ それを知るのも 口にするのも 難しいド田舎だった 狡賢くって やんなるくらいの 僕の頭はどこから来たの いいから早く …

夏は夜

懐かしさに噎ぶときも 夏は夜 蒸して奏でも半端に終る もう自ずから 海へ向かうことはなく あぁ無理くりの夏過ごしは 贈物だったのだと気づく 胸つぶれて恋しがるにも 夏は夜 思い返す時がいちばん強く脈打つ 犬に追われた運動場を もう蟻の住処のように見下…

はだけてゆく空

またも野分の行き過ぎた 背をさすって遣り過した 帰りしなのあの人を引き留めて 少しばかりの恋乞いも 思い悩みに 飛ばされた草を拾い歩き 立ち止まり ため息もひとつ あぁまた晴れ空来るか べつに呼んでもおらんのよ さらに野分の気配して 手を握って過ごし…

心地に残るなら

方舟は心地が悪かった でかい声では言えないが 例えば救われたと思った者も ババ引き気取る者もある どこに転がる 最大多数の最大幸福 我がが漏れるのは 何の気なしに知っていて 文をぱらりと捲れば 答えは書いていないだろうか 今さら時節の挨拶と その時々…

最後と最後

貴女が逝ってしまったら 線香のひとつでも上げに行かんばね それが義務でも錘になる 近頃専ら悩みです 貴女が弱ってゆくことは 齢数えれば当然で 私が責められる筋もない 自然の摂理と済ませましょ 海は渡れん凪来んと それか時世の所為にして もう行かんで…

海向こう

海に落ちるのが怖くってさ そんなはずない場所だって 立ってるだけでどきどきしたもん 何度も夢に見るうちに ほんとに溺れてしまうよな ほんとの海を見るうちに 平気な気もしてくるよな 甲板に出ればもう 海とは一重の境もなくて 連れてかれるよ 知らぬうち …

ゆれいのち

産声が聞こえた 気がした うだる真夏日に それが本当かどうか分からないくらい ぼやけているのが 救いだ 窓から見えるはずのない 森が広がり あぁあの映画の中にきたのか それならいいか 緩んだらもう 瞳が 馬鹿になってしまいそうだ せめてせめて 明日も真…

はじめから暮れどき

憧れた者は遠ざかり 私の身は朽ちてゆく なんと残酷で 真っ当な営みだ 列車のりつぎ 会いに行こうと思いたった その日に また苦しくなり あぁ人並みの生活も 許されないのかと 気落ちしたのだった 憧れた者は遠ざかり 私は身ごと心ごと 順調に朽ちてゆく

齢と夏夕

この腕に やさしく触れた人ほど すっと去ってゆくものね 齢も折り返し どうなるか分からぬと言っても 己の弱きは知っています よくても齢は折り返し もう恋を思い返す節 決してなんにも始まらないわ ゆらり縁側の椅子に凭れる それは物語の中か 老いた者の特…

別離空

さよなら大空 あなたのことは忘れます 手紙を携えた彼が そっとポストに投げ入れた もう読む前から 予感はあったもの 世が美しいと教えた 風もメロディも 消えてしまわなくていいから 私の前には現れないで そんな勝手は利かないから こちらから籠ります さ…

盆繰り

荻窪の駅前から 知りもしないのに北へつらつら どこかで西武線にあたるまで その心づもりであっているかしら あなたの住処かもわからぬ街を 面影なり何なり共有して この生を終えたいと思う そんなこと思わせるなんて 悪い男ね 夏は翳りを知らず 思いの丈を…

縁行き壇行き

本当は一生のうちに一度でも 誰かと心通わすことができたなら それだけで万々歳のはずの地に どこで勘違いしてしまったか 来い来い 夏の盛りは縁飾り 行け行け 安らかに 思い出させておくれ できればそばに来ておくれ そんな念が 飛び交う飛び交う かみさま…

heart

布団を深く被って いつも夢想していた 救いの手 美しい人でも まして王子様でもなく ただ温かに包んでくれることを望んで 贅沢は言わないよ 私がここに居ることを 許してくれるだけでいい 嬉しい言葉は I love you より on your side 何度でも言うよ 私の心…

明日

野分にやられた畑の 我楽多で遊ぶ子を もう慈しむことだけに 血を注ごうか 風は吹き返しの 気紛れ野郎 西へ開ける不利と 海風あたる日々の 凪とかわりばんこに 来んもんかね どしてこんなに野蛮かね 風邪はぶり返しの 人には言わじな ぐっと耐えてばかりおる…

うたは あなたの身体の中へ するりするりと入りこむ水 沈黙も寛解も うなだれた時も 確かにあなたの中にいるわ うたは 希望など描いていない ただに現実を飲みこむため たまの助けとなるものよ 彼自身が言っていたことだもの うたは あなたの身体の中で ゆる…

海待ち

盆には海に近づくなと 幾らいわれても曳かれるの あなた 坂を下った先 待っている気がするからね 旅人はもういないみたい 子どもたちも帰ったかな 2人きりだと思うと尚のこと いくら拒んでも曳かれるの いけないことなら一緒にしましょ だいじょうぶ 波音は…

干上がった夏

綺麗事を並べましょう 幾らでも 貴方が辞めるならその倍 また飛び立った鳥たちが 戻る保証もないようよ ただにさるいて 気が熱い夏を感じましょう 綺麗事を並べましょう 幾らでも 一人また一人辞めていくならその分 ほら打ち水はすぐに干上がり 喉干からびる…

あの子のうた

自転車で駆けていったあの子は 恥ずかしげもなく 大声で歌っていて 笑いながら こちらが恥ずかしくなるような でも愛おしく思えた およそ田舎の娘とはああいったもんか 知らなかったな 本当は手をとって 共に生きたいくらいの衝動を どうにかこうにか抑え込…

つづり道化

堪え性だけで 積み上げてきた人生だろ 一気にね 崩れる時は速いぞ 呼吸もまともにできんなら 早いこと見切りをつけておけば そんな後悔とも自嘲ともつかぬ ぼやきは溶ける38度 かしまし街の気に やられるな 否、やられてしまえ うやむや、分からなくするのが…

真中の夏

地の熱気ごと吸った 夏は確かに真中まできた 涼むに早い 我がの一身も支えきれぬなら 朽ちたほうが良いか 心臓が痛んできた 血は争えぬと こんなところで言いたくないな 声のでかい屑おとこの その前まで辿るなら もう血ごと 洗い流してしまいたくなるが 人…

もうひと雨を待っている

通り過ぎろ 通り過ぎろ 何事もなかったかのようにね 念じながら 念じながら どうして心のうちは もうひと雨を 躓いて誰も支えてくれぬ 慣れすぎて強くなった足腰だろ 腕が千切れそうな荷でも 抱え帰り着く癖がつき 耐えすぎて 耐えすぎた 少女はいつの間に …

海の花

古い船はひどく揺れた 物語のようにはいかないと 知っていることが強みになった 故郷に帰るとは あたたかいばかりではないはずだ そういう者がいることを 我が身を以て知っている 甲板には 客室が馴染まない者が立つ どうせ揺れる どうせ酔うなら 身を落とす…

戻り声

声が 声が恋を思い起こすことはあれど 十数年たって 声に 声に恋を自覚することがあるとはね 怖かったのよ 音楽を分かっている人が 嫌われていると 思いこんで思いすぎた私は 知らない世界を持っているような 弾かれて除けられるような 勝手すぎたね だけど…

夏の自由

噎ぶこともなくなった夏の自由が こんなにも追いこんでくるとは思わなかったわ 爪の先は何処かへ飛んで 西瓜の種も飛ばした幼い日 誰の所為でもないのに空は 照りつけ 暮れれば照り返し いつも会えると思っていたのは ただの願望だったみたいね 整いすぎた夏…