おとのは ことのは

詩と曲を書いています。

美しい傷

少し冷めてしまった湯を注ぎ

面倒くさがりが茶を啜る

古い家で得た一瞬の

和やかな香りが泣けてくるでしょ

 

明日には治るか

治れ

美しくとも拒絶したい

 

まだ来るか

痛みは痛み

称えられることなどないのさ

 

前に進むなどと世間のたわ言が

垂れ流される通信を切り

ただに今この時を遣り過す

それが人生の大半になりつつある

 

今日にでも治るなら

治れ

此方としては一向に

 

構わぬのに

痛みはまた痛み

普通の暮らしが

 

知らぬ暮らしが

恋しくなって

 

美しいことなどないさ

無理に称えれば

文字通り傷が広がる

 

もう冷めきってしまった

茶を啜り

何者でもない手で

傷口を押さえた