おとのは ことのは

詩と曲を書いています。

末子のひとみ

波には慣れた

幼な頃から

水面を水平に見て

揺れていた

 

なぜに離れた

心寄せた兄は

頭撫でてくれた

記憶だけ残して

 

行くなゆくな

歌えど叫べど

波の前に

声は幼く

 

死ぬな消えるな

呪文如きでは

叶わぬことなど

千年前から

 

波に伝えた

童謡たちも

知らぬ調べと

混ざって朽ちた

 

遠く離れた

心強き姉は

末子の小さな

赤みに気づかず

 

行くなゆくな

歌えど叫べど

波の前に

声は幼く

 

死ぬと分かって

生きることほど

酷はないさ

万年前から

 

波は伝えた

揺れて酔わせた

心弱き幼な子

生きてゆけよと

 

波には慣れた

末子の瞳は

水面を水平に見て

潤んでいた