たとえば私の母が
人より少し賢ければ
向こうと此方行き来するような
こんな子を導けたでしょうか
たとえば私の父が
あと少しでも優しければ
風が吹いても怯えるような
敏感な子でなかったでしょうか
たとえば私の生まれた世が
もう少し間口広くあったなら
病と呼ばれるものさえと
才としてくれたでしょうか
曳かれる気がするのです
すぐに苦しくなるのです
声が聞こえるのです
もう天より他無しとなり
それでもこの地で生きなければ
妥協のようにのらりくらりが
止まずにいるだけのことなのです
ずっとずっと恨みつづけた
母も父も世もすべて
如何ともし難い子だったのやも
そんな諦めを見るのです