おとのは ことのは

詩と曲を書いています。

外へと暗がり

名を知らぬ木が揺れていた

横断歩道の先の家

金持ちらしくピアノを弾いていた

田舎町にそぐわぬハイカラな調べねと

妬み嫉みで思っていた

 

夏夜は嫌でも覚えている

暮れるのに時間がかかる

この国でいちばん

 

蒸されて長い夕が

やっと閉じたころ

ひとり歩いて

帰る帰るよ

 

部屋に籠る

逃げろ怒鳴り声から

どこにも居場所はないもんね

 

開け放した網戸から

外の蒸し蒸しだけ入れて

汗だくになっても

外を向けるだけましだった

 

夏夜は嫌でも思い出す

早く暮れてくれればいいのに

何なら町ごと沈んでと

 

心暗がり長い夕が

蛍待ちの人に当てられて

ひとり歩いて

帰る帰るけど

 

何の贅沢もいらないから

怯えず暮らす心持ちだけほしい

神様がくれないかな

 

浜から続くどこかの陸に

安寧の地があるなら

汗だくになっても

漕ぎ進めたい

 

どうにもならない思いなら

皆抱えてればいいけれど

ひとりで持ってる気がした

狭くて綺麗すぎる夏を

 

恋しがりたい気持ちも

沈みこみたい暗がりも

どちらとは言えないよ

夏夜はどうしても思い出す