おとのは ことのは

詩と曲を書いています。

戦士の暮れどき

塵も埃もかわいいもので

後にした土のいとおしいくらい

血とひしゃげる肉の

におい

呻き

明日には消えてしまえ

俺ごと

 

うつろうつろな

文学好きじゃ

生きてゆけぬから

必死で走っただけ

 

本当は本当は

生温い平和など

無いこと

知っても

知っても

喉から手が

 

捕らわれた鎖の冷たさ

憶えて

見知らぬ奴らの吐く言葉

染みついて

 

呆けて

何年も後に

孫に吐き捨てた

怒鳴りつけた

おそろしい

おそろしいことだと

幼子は後に云った

 

逃げ出した戦士

ひ弱には辛い土地

腰抜けであるから

生きながらえて

 

なんにも残らなかった手が

しおれてゆくのを

日の下で

見ているだけの暮れ