この腕に
やさしく触れた人ほど
すっと去ってゆくものね
齢も折り返し
どうなるか分からぬと言っても
己の弱きは知っています
よくても齢は折り返し
もう恋を思い返す節
決してなんにも始まらないわ
ゆらり縁側の椅子に凭れる
それは物語の中か
老いた者の特権のように思っていたけれど
もう容易いわ
この指に
やさしく触れた人ほど
ずっと心に残るものね
夏の激しさは放っておいて
世の中にそんな人がいたとしても
私はやさしさをとります
空蝉の夕
葉音は消されて
暮れ暮れも
自分でなぞる
いつか触れた手に