古い船はひどく揺れた
物語のようにはいかないと
知っていることが強みになった
故郷に帰るとは
あたたかいばかりではないはずだ
そういう者がいることを
我が身を以て知っている
甲板には
客室が馴染まない者が立つ
どうせ揺れる
どうせ酔うなら
身を落とすまでもなく
空見上げるほどでもなく
船進む先をぼんやりと
眺めていよう
もう我が知る土地
余所から来て
ちょろっと住んで
ぶっている者があるのなら
それも放っておいて
地に足着けて得た
苦しみを閉塞を
ただただ持ってゆくのみだ
まだ荒れる
きっと揺れ続ける
それを知っていることが
嫌でも強みになった