おとのは ことのは

詩と曲を書いています。

取るに足らない

幾らでも手にできた富を

手放した人がいたそうな

平屋育ちの憂き身には

理解できないものだったけど

 

棺から片腕出しておいてと

頼んだ人がいたそうな

結局は怖がられるからと

仕舞われていたそうだけど

 

何にも持っていないのよ

ほら

何にも持っていけないのよ

 

友引くと忌まれる日に

あえて送り出してくれ

習わしや思いこみに

囚われることのないように

 

そんな人がいたそうな

 

何でもないものだったのよ

もう

何でもないものなのよ

 

口伝えに此処まで届いた

何も持たぬと嘆く身に

これで良いわけはないけれど

辿ってきただけなのよ

 

辿っていくだけなのよ

 

何にも残らないからね

何かを残したいと切望しても

 

意味のないものだと知るまで

打ちのめされるまで生はあるかしら

 

何にも分からないものよ

そう

何にも分かれないものよ