おとのは ことのは

詩と曲を書いています。

雨酔い歌酔い

歌に酔った

外は雨

もはやこれまで

独りでに感じる最期

 

ここからが長いのにね

勝手に嘆くのはやめて

 

歌うたいは

どこも雨

風前の灯火

遣り過すすべも持たない

 

思いこみと使命感は

勝手に失わないようにしてる

 

歌が死んだ

そのときが

雨にも負けて

本当に訪れる最期

 

軽はずみなこと言えないわ

終わる時まで分からないから

 

歌に酔って

いまだ雨

介錯要らず

口ずさみながら迎える最期

また話したいね

3号線の脇道に入って

うろうろと辿り着いた

もう一度ひとりで行けと言われても

きっと難しいかな

 

洒落た店は苦手なの

分かっているし金も持たない

若い背にかかる西日を負って

カランと入ったもの

 

窓辺には薄汚れたポスターと

小さなテーブル

今からでも話がしたいわ

戻れるかな

まだあるかな

 

いよいよ暮れきって

なけなしの財布はたいた分

笑うわけにも困り顔でも

いかないじゃない

難しいね

 

せまい店にかかる曲

分かる気がして辿り着けない

あれやこれやに似てる気がして

そんな話ばかりして

 

窓辺には西町でも

いよいよ分かる夜の影

心戻って話がしたいわ

伝わるかな

伝えたいな

 

好きや嫌いが町に溢れるほど

あまのじゃくが2人そろって

どちらでもない話をしてね

心地いいものだったの

 

いずれ戻る大通り

ついてゆくしかない気がして

ひとりでも行ける気がして

 

手をふって分かれましょう

またね話をするために

遠目にも分かる寂しさ

夜の車通りにかき消してもらった

いちごのひ

あまい苺をひとつ ほおばれば

だんだん酸っぱくなってくる

頂きものだもの

ぞんざいにはできないけれど

得意じゃない

 

その赤にやられたのね

 

あまいミルクがいいかしら

シロップに漬ける手業はなくて

 

すぐに恋の歌など始める

人も嫌いよ

生憎ね

果物は果物であって

それ以上でも以下でもないのだから

 

時世に関わらず

籠りきって

今いつ何時にいるのやら

堅い砦の中で

行く季を知るために

 

送られてきたものだもの

 

あまいその実が朽ちるのを

知っているから急いで食むわ

 

ついでに恋の歌など紡ぐ

格好つけにはなりたくなくて

果物は果物の季を

以て実っただけなのだから

行き交う羽根

羽根を捨てたものもあれ

野においてきたの

誰求められることもなく

ざらしざらし

 

空へ飛んでゆくことが

一番美しいのなら

地は何のためにあるのでしょう

そんなことばかり気になって

 

見下ろした木々はどう?

容易く茂っているかしら

こちらからは何もないまま

言伝、以上です

 

身体が熱くなった気が

気の所為でしょ

すぐに冷めるわ

諦めることを刺す物語が多いのに

その実諦めることばかり

 

高みを目指してゆくことが

一番尊いのなら

足を挫いてしまう人があるのはなぜ

誰の思惑かとばかり考えて

 

きっと意味のない営み

容易く死んでゆくのもそう

こちらからは窺い知ることもできぬまま

以上です

 

春休み

手を取って駆けてゆく

兄妹の幸だけを

願うのみ

 

見下ろした世界はもう

容易く操れる玩具のようでしょ

だけどその片隅いのちも

負けずにあるの

知っていて

未知の病

誰がかかるか知れぬ病に

どうやら前世から侵されている

 

分かりっこないわ

まだ此方では解明されていないのだもの

 

むかし文豪たちの

生き死にやら

話説を見るにつけ

やたら自裁の多いこと

気になって教師に尋ねたことがある

 

きっと此の世界では

表現が追いつかなくて

あちらへ行くほかなかったのでしょう

死というよりも胸持つものを

表すための手段でしょう

 

腹にすとんと落ちたもの

あぁ詰まったものを言い得てもらい

そのまま持っているもの

そういう人が生まれるのだと

 

例えばふらついて

誰かの手に支えられても

まるで汚いものでも見るかのように

はね退けてきたのは自分

 

分かりっこないわ、

それに縋ってきた半生だもの

うらはら雨

雨は仕様がないのだけれど

風まで吹いて強まって

 

面倒なんて思われたくないけど

蔑ろをそのままは許せない

電話のあと噎ぶくせに

強い言葉は使えない僕

 

あとで後悔する一番優しい時に

照準を合わせていないと

 

雨は色香さえ纏う

心と裏腹もいいところ

 

壊れた傘も

どこかへ放れずに

綺麗に持ち帰って

仕舞う君

 

胸に詰まった彼是を

晒しても伝わらないだろ

そっちが悪い

こっちが悪いの?

決めなければ済まないさが

 

間違った者にはなりたくないけれど

心に背いては息がつづかない

 

雨は遠くいつかは晴れる

そこでぼやかしが効かなくなるね

 

いっそ降って

誰も彼もが晴れ空望んでいるなんて

思わないで

 

雨は誰かの涙というなら

分かってくれる同志でしょ

間違っていたとしても

今一番そばにあるもの

空の貴方

貴方の背を追って

何時しか消えてしまった

暗いトンネルは夢に

何度だって

沸き立つ

 

空よ空よ

舞う鳥の

憎らしいと撃ち落すな

その前に

殺生するくらいなら

籠って朽ちてゆくがまし

 

貴方の夢に出て

侵されるような頭をしている

トンネルの向こうは

花畑

決して雪国ではない

 

この大地よ

行く群れの

騒がしくも営みの

一つ一つ

宿る火が

恨めしいうちに眠れ

 

何度も見る夢は

呪いに等しい

 

空よ空よ

舞う鳥の

行く先羨ましく見ていた

私など

生殺与奪

貴方に握られているのに

 

その背は見えない癖に

いい気なものね

さながら週末の

ぐっと飲みこんだ昨日の

汚い台詞

今もやり場がなくて

週末の彼是に

溶けてゆく気配もないから

 

一生持ち続けるのだろうか

少しずつ薄まってゆくか

両方経験あるから

安心もするし

怖くもなるね

 

青い日は終わったとして

何者になれたでもない

モラトリアム気取るには遅すぎるし

何かしら悟り開いたわけでなもなし

 

日曜の街は雨

此方から出向いてやるもんか

 

言われなくたって

巣籠もるように生きているから

心配無用よ

その代わり

心の中は洗えないけど

 

容易く崩れ落ちる

泣き癖つかないまま大人になって

たまにね自分でも信じられないくらい

声を上げるわ

だって世は嘆くに足る

 

青い空見上げるのが

すっと美しいと言われてしまえば

そっぽ向く癖がついて

前髪切ってまた幼くなった

 

子をあやす場合じゃないわ

自分の機嫌に振り回されて

上手く処理できないままで

死んでゆくところまで見えた

 

ぐっと飲みこんだ彼是

連れてゆこうか

叩き割ろうか

綺麗に溶けてなくなることは

ないだろうな

春日の床

床に臥せることに慣れだして

世間ずれにも項垂れるころ

気づいているだけ良いでしょ

自分で励ましてみる

 

遠い手紙に綺麗な文字

この時代に大したものね

昔なじみの欲目かな

春日もさして

 

あやふやな形でしか

愛せないのよ

この先も

 

今日や明日の天気より

息はつづくのかしら

 

寄せて返す波を描くとき

音も息づかいもよみがえる

流行りの歌とは違うでしょ

自分たちで見聞きしてきたもの

 

手紙の2枚目ににじんだ文字

距離も時代も超えるものね

走馬燈など要らぬから

春日には浜に出て

 

あやふやな形だとしても

愛したいのよ

この先も

 

明日明後日の理想さえ

描くのに根のいるものだもの

 

起きあがった狭い床で

あと幾つ呟けるかしら

世は虚しと吐きたい時ほど

春日はさして

刻の唱歌

子の刻過ぎて

少し前なら

ほのか灯りも消えていたわ

 

歩きなさんな

そんな真暗に

人あらざる者も湧き出でる

 

咽が痛めば

これは病か

生き死にに係るものか

探る世で

 

少し前なら

蜜舐めて

慰めたものでしょう

 

騒ぎなさんな

こんな浮世に

不老不死などあるわけなし

自分の好きに逝けるでもなし

 

丑の刻には

社殿を行き来

呪い通して救い求めて

 

灯すわ提燈

泣きなさんな

行けば地獄と決まるでなし