歌に酔った
外は雨
もはやこれまで
独りでに感じる最期
ここからが長いのにね
勝手に嘆くのはやめて
歌うたいは
どこも雨
風前の灯火
遣り過すすべも持たない
思いこみと使命感は
勝手に失わないようにしてる
歌が死んだ
そのときが
雨にも負けて
本当に訪れる最期
軽はずみなこと言えないわ
終わる時まで分からないから
歌に酔って
いまだ雨
介錯要らず
口ずさみながら迎える最期
3号線の脇道に入って
うろうろと辿り着いた
もう一度ひとりで行けと言われても
きっと難しいかな
洒落た店は苦手なの
分かっているし金も持たない
若い背にかかる西日を負って
カランと入ったもの
窓辺には薄汚れたポスターと
小さなテーブル
今からでも話がしたいわ
戻れるかな
まだあるかな
いよいよ暮れきって
なけなしの財布はたいた分
笑うわけにも困り顔でも
いかないじゃない
難しいね
せまい店にかかる曲
分かる気がして辿り着けない
あれやこれやに似てる気がして
そんな話ばかりして
窓辺には西町でも
いよいよ分かる夜の影
心戻って話がしたいわ
伝わるかな
伝えたいな
好きや嫌いが町に溢れるほど
あまのじゃくが2人そろって
どちらでもない話をしてね
心地いいものだったの
いずれ戻る大通り
ついてゆくしかない気がして
ひとりでも行ける気がして
手をふって分かれましょう
またね話をするために
遠目にも分かる寂しさ
夜の車通りにかき消してもらった
羽根を捨てたものもあれ
野においてきたの
誰求められることもなく
空へ飛んでゆくことが
一番美しいのなら
地は何のためにあるのでしょう
そんなことばかり気になって
見下ろした木々はどう?
容易く茂っているかしら
こちらからは何もないまま
言伝、以上です
身体が熱くなった気が
気の所為でしょ
すぐに冷めるわ
諦めることを刺す物語が多いのに
その実諦めることばかり
高みを目指してゆくことが
一番尊いのなら
足を挫いてしまう人があるのはなぜ
誰の思惑かとばかり考えて
きっと意味のない営み
容易く死んでゆくのもそう
こちらからは窺い知ることもできぬまま
以上です
春休み
手を取って駆けてゆく
兄妹の幸だけを
願うのみ
見下ろした世界はもう
容易く操れる玩具のようでしょ
だけどその片隅いのちも
負けずにあるの
知っていて
誰がかかるか知れぬ病に
どうやら前世から侵されている
分かりっこないわ
まだ此方では解明されていないのだもの
むかし文豪たちの
生き死にやら
話説を見るにつけ
やたら自裁の多いこと
気になって教師に尋ねたことがある
きっと此の世界では
表現が追いつかなくて
あちらへ行くほかなかったのでしょう
死というよりも胸持つものを
表すための手段でしょう
腹にすとんと落ちたもの
あぁ詰まったものを言い得てもらい
そのまま持っているもの
そういう人が生まれるのだと
例えばふらついて
誰かの手に支えられても
まるで汚いものでも見るかのように
はね退けてきたのは自分
分かりっこないわ、
それに縋ってきた半生だもの
雨は仕様がないのだけれど
風まで吹いて強まって
面倒なんて思われたくないけど
蔑ろをそのままは許せない
電話のあと噎ぶくせに
強い言葉は使えない僕
あとで後悔する一番優しい時に
照準を合わせていないと
雨は色香さえ纏う
心と裏腹もいいところ
壊れた傘も
どこかへ放れずに
綺麗に持ち帰って
仕舞う君
胸に詰まった彼是を
晒しても伝わらないだろ
そっちが悪い
こっちが悪いの?
決めなければ済まないさが
間違った者にはなりたくないけれど
心に背いては息がつづかない
雨は遠くいつかは晴れる
そこでぼやかしが効かなくなるね
いっそ降って
誰も彼もが晴れ空望んでいるなんて
思わないで
雨は誰かの涙というなら
分かってくれる同志でしょ
間違っていたとしても
今一番そばにあるもの
ぐっと飲みこんだ昨日の
汚い台詞
今もやり場がなくて
週末の彼是に
溶けてゆく気配もないから
一生持ち続けるのだろうか
少しずつ薄まってゆくか
両方経験あるから
安心もするし
怖くもなるね
青い日は終わったとして
何者になれたでもない
モラトリアム気取るには遅すぎるし
何かしら悟り開いたわけでなもなし
日曜の街は雨
此方から出向いてやるもんか
言われなくたって
巣籠もるように生きているから
心配無用よ
その代わり
心の中は洗えないけど
容易く崩れ落ちる
泣き癖つかないまま大人になって
たまにね自分でも信じられないくらい
声を上げるわ
だって世は嘆くに足る
青い空見上げるのが
すっと美しいと言われてしまえば
そっぽ向く癖がついて
前髪切ってまた幼くなった
子をあやす場合じゃないわ
自分の機嫌に振り回されて
上手く処理できないままで
死んでゆくところまで見えた
ぐっと飲みこんだ彼是
連れてゆこうか
叩き割ろうか
綺麗に溶けてなくなることは
ないだろうな
床に臥せることに慣れだして
世間ずれにも項垂れるころ
気づいているだけ良いでしょ
自分で励ましてみる
遠い手紙に綺麗な文字
この時代に大したものね
昔なじみの欲目かな
春日もさして
あやふやな形でしか
愛せないのよ
この先も
今日や明日の天気より
息はつづくのかしら
寄せて返す波を描くとき
音も息づかいもよみがえる
流行りの歌とは違うでしょ
自分たちで見聞きしてきたもの
手紙の2枚目ににじんだ文字
距離も時代も超えるものね
走馬燈など要らぬから
春日には浜に出て
あやふやな形だとしても
愛したいのよ
この先も
明日明後日の理想さえ
描くのに根のいるものだもの
起きあがった狭い床で
あと幾つ呟けるかしら
世は虚しと吐きたい時ほど
春日はさして