あまい苺をひとつ ほおばれば
だんだん酸っぱくなってくる
頂きものだもの
ぞんざいにはできないけれど
得意じゃない
その赤にやられたのね
あまいミルクがいいかしら
シロップに漬ける手業はなくて
すぐに恋の歌など始める
人も嫌いよ
生憎ね
果物は果物であって
それ以上でも以下でもないのだから
時世に関わらず
籠りきって
今いつ何時にいるのやら
堅い砦の中で
行く季を知るために
送られてきたものだもの
あまいその実が朽ちるのを
知っているから急いで食むわ
ついでに恋の歌など紡ぐ
格好つけにはなりたくなくて
果物は果物の季を
以て実っただけなのだから