おとのは ことのは

詩と曲を書いています。

愚痴て候

私のほうがつらいって

言い放ってほら

間違ってはいたくないって

強迫観念が

 

オートロックは平気だったのに

玄関入るころには落ちこんでるの

馬鹿みたいな気風

 

うまいこと摺り抜ければいいのよ

大抵の歌はそう言って

たーんと処理しなきゃ生きられない

そんなさがを無視するじゃない

 

温めなおした夕餉

抜けない記憶に噎ぶ時

指の間から荒れていって

冬に逆戻り

 

道を教えた異国のお人は

大丈夫か気になって

振り返ったらいなくて

辿り着けたならいいのよ

私の満足のためじゃないから

 

大抵の歌はいつだって

綺麗にあろうと試みる

じとっと染入る生きづらさを

誰も節には乗せないじゃない

 

えにしは切れず

私を救わず

ただに居座る

駅前のエレジー

改札を出たときに

羽が生えたように軽くなって

ダイエット成功するどころか

立ち消えになっているのに

 

春の陽気がそうさせるのかしら

 

なんだか好きになれない

中途半端な田舎町だと

そっぽ向いていたけれど

込みいったビルの中の駅じゃ

こうもすぐ気にさらされない

 

ありがとう

春の日と

駅前すぐの木と風と

 

ぐらつくこともあるでしょう

気分が上がったすぐあとに

人生が途絶えることもあると

もう知っているから

織り込み済みでいいじゃない

 

暮れてなお美しい

桜葉は世を愛でる

私がそうはなれない分

純であろうとしてくれるのね

 

嫌いな町は嫌いなままで

昨日の彼是は美化できないままで

 

ありがとう

春の日と

駅前すぐの花と雲

夏刻

裏の川で冷やしておいた

西瓜そろそろいいんじゃない

擦りむいて泣いた子の帰るころ

日も西へ行く途にあって

 

静まるまではもう少し

昔ね 住んでた街に比べれば

随分と遅く感じる一刻

 

夕ごはんも

ちゃんと入るように

食べすぎなさんな

でもきっと

好きにできる刻も短い

3切れくらいは好きにしな

 

ほたる灯りは懐かしみ

恋しがる日も来るでしょう

でもねそれは大人の感傷

押しつけがましくは言わないわ

 

寝静まるまではもう少し

見守りも見守られもしながら

共に生きているだけでいい

 

朝ごはんも

仕度の仕甲斐

食べなくなった

誰かさんに倣って

反面教師よ

元気なら あとは好きにしな

国道

泣いた夜の話を

あなたが憶えていたとてね

いいのよ声に出さなくて

どうせ過ぎてくものだもの

 

国道1号

長く続くだけあって

汚らしくも見えるもの

 

誰の所為でもないと

綺麗な言葉が飛び交って

そんな世の中で

確実に彼の所為ということも

あるでしょう

 

国道3号

思い出ばかりの故郷が

いつまでも攻め寄せてくる

 

繋がっているようで

離れてゆく

絆のように見せて

囚われている

 

道とはそういうものでしょう

薄雲のふし

薄雲が来るらしいわ

構えておいてね

人は急には止まれない

 

降られてみるのも一興

云うは易しで

つまるところ虚弱が増すだけでしょ

 

只でさえ只の24時間も

難しいというのに

 

彼が置いていった

いつだって食べられるという甘い菓子

そんなこと言われたら

未来永劫食べない

そのまま死んでしまうわ

 

薄雲はいよいよ迫って

覚えておいてね

人も気も変わるもの

 

何も女心に限らなくても

言伝えは時に嘘ついて

男だって十分変わってゆくじゃない

 

目の前で愛を唱えても

判らないくらいだから

 

傘は置いていった

そういう人よ

憎たらしいったらない

平気なことが多すぎて

未来永劫靡かない

そのまま朽ちてゆくわ

 

遣らずの雨と詠む

そんな時代の生まれではないし

 

感傷に浸る気力もなくて

あぁそうか

あれは若く気が満ちていたからできたことだと

今さら思い至っても

戻らない時にいて

 

薄雲は呆気なく去っていった

通りすぎた正しさのあと

通りすぎた熱に合わせ

口を動かして歌う振り

涙流して手を取り合って

美しいものが正しいでしょう

 

いいのよそれで

あるべき姿はきっとそれに違いないから

だた片隅で目にも触れずに

生きのびただけの命もあるもので

 

やたらと絆を歌う世に

定めて反旗を翻す

そんなつもりは無いのだけれど

寂しく慎ましく

己の中だけで

もがく者があってもいいでしょ

 

帰りついた人は安堵と

どうか安寧を願うこと

優しくあろうと目を合わせて

それがこの世の真理でしょう

 

いいのよそれで

できれば皆が皆

正しさでありたいから

ただ片隅で手も汚れたまま

息はつづいているもので

 

やたらと絆を唱えれば

そこから取り残された時

汲むべき者は

つづく景色は

己の中だけで

消化してゆくしかないのだから

 

やたらと絆を歌う世に

 

文句のひとつも言えないからね

寂しく痛ましく

己の中だけで

もがく者があってもいいでしょ

伝う筆持ち

筆を執ってはみたのだけれど

上手くするりと運ばなく

そうか本当の恋と云う物

知らずにいたのね

ためいきね

 

紙を繰ってはみたのだけれど

手にはざらりと伝われて

そうねこの身は思うようには

いかぬものよね

背に腹に

 

時を眺めてみたのだけれど

振り子振るだけ振りぬいて

針は何時指すこともなく

止まりきったの

つかれたの

 

空を仰いでみたいのだけれど

格子窓さえ小ささに

さっき生まれたような気に

なってゆくのね

ゆくほどね

 

天に昇ってみたいのだけれど

物の試しとはいかぬまま

そうよ出戻るわけにもいかず

途方に暮れると

知ってるわ

 

筆を置いてはみたのだけれど

妙にどくんと心の臓

書かねばならぬものは湧き出て

天邪鬼にも

ほどがあり

 

遠い貴方を呼ぶのだけれど

伝う十字も手になくて

歌う讃美は異国の言葉

憶えきれずに

終わるのね

歩道橋と並木

かなしがっていた

私を連れていかないと

いい加減にしないと

歩道橋の向こう

今すぐにでも見えなくなるよ

 

ルンと弾んだ恋の歌

憎らしくもなる今日の日は

 

街の幸せにあてられて

何の木かも知れぬのに連なる

その下を

仕様もなく働きに出ては

引き摺って帰ってくるだけの

 

陽気が悪いんだ

雨でも面倒な

曇りは半端な

 

何にしても文句言いの

不幸せも当然か

 

さみしがりなんて

思われてたまるかって

先回りで構えた

歩道橋の上り

すぐ苦しくなる体力無しだ

 

泣いて嘆くは愛の歌

バカバカしくって今日の日は

 

誰の幸せにあてられて

不幸になった気になんな

並木道

歌って歩いていっても

咳き込んで帰ってくるだけの

 

いつからだったかな

リズムも詩もメロディーも

大好きなのに

 

どれを取っても

ぶきっちょの

不幸せがつきものだな

遠くねむる

外は雨だったか

もう少しで上がるころ

貴方が指先に触れたのが

合図だと思ったもの

 

まさかこの身に起こると

知らず知らず

身落とした部屋で

 

ゆっくりと探ってゆく

言葉足らずの貴方の目を

手を

必死で追いかけた

 

熱があれば大丈夫

それが愛だと信じて

受け入れるだけ

 

季節いつだったか

誕生日も過ぎたころ

貴方の声もめずらしく

震えているなと思ったもの

 

小さなこの身も放って

知らず知らず

溶けあった部屋で

 

ゆっくりとなぞってゆく

心弱くて私の目を

手を

掴んではなさない

 

感触があるから大丈夫

はじめて愛だと信じて

受け入れただけ

この身は秋冬

許せないことが多くてね

年寄りじみたことばかり

窓辺でぼやいているだけさ

 

煮え切らないままでね

死んでゆくのだと見えた日は

どう足搔いてやろうかと思案して

 

小道をゆく子等はきっと

これから出会うか知らぬままか

いづれにしても羨ましいだけさ

 

許せないことが多すぎて

年だけ食って憚らず

窓辺に座っているだけさ