おとのは ことのは

詩と曲を書いています。

偶の見舞い

臥せった姿を部屋の入口 隙間から

見ていた姿が頭に残っていて

どうしても離れないから

気を揉んで 珍しく

顔を見に行ってしまった 柄にもなく

 

此方の憂いなど知らぬよう

気の毒とは程遠く

彼女は窓の外を見ながら

澄んだ声で歌っていて

 

呆気にとられた僕を見て

クスッと笑うもんだから

恥ずかしくもなったもんだけど

君が元気なら

もう他はなんだっていいさ

 

病弱っていうとどうしても

窓辺で憂いて

白いワンピース着た

儚げな美少女を思い浮かべる人いるでしょう?

そんな綺麗なもんじゃないし

しおらしくもないからね

 

彼女らしい言葉だった

そして僕は信じたし

人が臥せるということを

簡単に考えすぎていた

綺麗に描いて目を背けていた

と同時に重く考えすぎてもいた

 

僕は身体も丈夫で力も強いけれど

彼女には遠く及ばない気がした

ずしっと重いものが乗っかったような

軽薄を神に見透かされたような

学が無いから表現も覚束ないけれど

 

春の嵐が過ぎたころ

雷に連れてゆかれた青

見慣れたはずの空が

違って見える不思議

 

思わぬことに見舞われるのは

誰だっておんなじだろう

どうして忘れてしまっていた

我が身に君が身に

降りかからないなどと

 

ただに声が聞きたくて

悪戯な顔が見たくて

会いに行くには

遠い遠い

それでも窓辺で

彼女は

澄んだ声で歌っている