おとのは ことのは

詩と曲を書いています。

僅かな追憶

何者にもなれなかったということが

彼女を形づくっているのだろう

 

愛に飢えていったわけでなし

感ずる力を持てなくて

 

過ごした地は

都会の隅の

川まで少し

小部屋の中で

 

静かに終えたのか

人生そのもののように

息は苦しかったのか

知る者のないことが

 

彼女を些か惨めに

神秘にする

 

何者にもなれなかった

彼女のことが

薄い棘のように残るのは

なぜでしょう

 

多くの人は知らぬけれど

口ずさんだその歌が

書き留めた言葉たちが

残りじわり拡がる

 

彼女の人生とは

そういった類のものだったのでしょう