おとのは ことのは

詩と曲を書いています。

八雲

整えられた棚に季節の絵本

今時分はクリスマスの鮮やか

地階にありながら陽も注ぐ

大量の本に囲まれた時

 

あぁ知を得るに一生は

何と短いことだろう

決して烏滸がましく全知全能を

求めるわけではないにしても

 

己の出自を恨んだり

それでも平和な国で時代だと宥めたり

小さなところで燻っている

やわい魂だこと

 

平日の昼間に若い娘が

働きもせず

然し学生という風情でもなく

ふらふらと歩いていると

 

何者でもない居心地悪さが

何かに属している時でさえ持った

世にあること自体の惨めさが

風より強く染みるもの

 

空を見ればその広さ高さに

己の小ささと驕りを見る

古今東西云われたことに

異論はないのだけれど

 

それよりも私は

この大量の本に囲まれた時

 

あぁ生き全うするに一生は

何と短いことだろう

しかもそのうち確かに意識を持って

病から逃れうる時間が

どれだけ与えられるだろう

 

慣れは怖いもので

贅沢にも己の意味を求めるが

そんなことは二の次に

 

おおよそこの世界を理解したいと

一片でも掴みたいと願うだけで

終わるくらいの命だろう