おとのは ことのは

詩と曲を書いています。

隣まちの思い出

感覚がなくなっていゆくのを

身をもって感じていた

おかしな話

 

街はずれの

新しぶった病院に

1人で歩いて行った

苦さの秋

 

例えば目まいも

荷物の重みも

取られるわけにはいかない

腕と足

 

自分の力で立って

歩いていかなければ

誰も助けてはくれないから

 

あぁこれが

愛の不足というものか

 

暮らし向きのことでない哲学が

もろに暮らしに響いてきて

本など読まぬようにして

思いめぐらせは止まらなくて

 

狂っていないとは言えない人たちと

おんなじ病棟にぶち込まれた

好きに外に出られたけれど

自由になった気はしなかった

 

話を聞いてくれる人だって

私を救うわけではない

その手助けだと分かってはいるけれど

 

心の内を話せる家族がいますかと問われると

いないと答える虚しさも耐えられず

いると嘘つく気力もなくて

 

あぁここが

愛なき星なのか

 

今思えば本当にあったろうかと

薄まってゆくあの生活も

必要なものだったと繕う言や歌に

嫌気がさす性格で

 

金が何とかなったのも

気を何とか保ったのも

奇跡のようだ

今正気でいるだけで

 

でもまだ

愛は遠いと感じるもの

例えば目の前にあったとしても