おとのは ことのは

詩と曲を書いています。

西町の春待ち

東の街は暮れが早いのね

春は名のみの 口ずさむ

遠きものを思うのは

案外容易いものなのに

 

手と手を取った

その平が荒れていたこと

感覚が残る

 

冷たい水に触れるにつけ

思い起こすようにできていて

それは三寒四温の営み

すぐには溶けない蟠り

 

今日は葉に街に吹かれてね

春一番と名づけても

追いついてこない肌触り

まだ仕舞えない幾つかの上着

 

肌に合わせて

似合いの色を

ああだこうだと言ったこと

 

冷たい風に当てられて

思い出すだに愛おしい

それは遠いから起こること

恋しさなど いづれ錯覚

 

擦りむいた膝

潮につけるなど

できるはずもない街にいます

 

冷えた感覚はどこまでも

残ってそのまま死に絶えるまで

今は三寒四温の営み

中にいれば気づけぬ蟠り

 

入り交じって

名づけようもないまま

ぐるり進む時を

只思うだに愛おしい

遠きものほど堕ちる錯覚