たった三畳の古びた部屋に
身を転がしていた
天下取るわけでもあるまいし
この空間さえ有り余る
むなしい命
畳のささくれが
弱い肌を攻めてゆく
「もういいよ」
誰かの言葉を待ったけれど
障子越しには
良くて帰りの子らの声
悪くてかしましい電話
何れにしても救われぬ
また重くなってゆく身
季節の律儀が憎らしい
遠い異国がはた恋しい
見るものすべて遠ざかる
目にするより先しんでゆく
畳の古いにおいが
誰も転がらなかった歴史を教えて
「もういいよ」
神様にすがるのは
読みかけの The Old Testament
資格がないから
良くて地獄
悪ければ何処へも行けない
行けるか知れない
軽はずみに云うものじゃないでしょ
それくらいなら知らぬ中で知って
もうね三畳の古びた部屋が
似合いの身になってゆくの