おとのは ことのは

詩と曲を書いています。

いつのまに、帰れない海

海を見ていた

その記憶だけで

飯が3杯食える

 

そう言い放ったはいいが

そもそも飯が3杯も入る

体ではなかったか

 

海を見ていた

人々が恋しがるそれではなくて

立ちはだかる現実として

飲みこまれる理想として

 

私を連れ出してはくれなかった

潮の香にあてられて咽かえした

 

決して好きとは言えないし

大手を振って帰れもしないが

海を見ていたその記憶だけで

生きてきたことは確かである

 

海を見ていた

その記憶だけが

図らずも支えてきた体

 

いつのまに

望むはずもないのに

帰れない海になったか

 

恋しがるには素直さが要る

付いて回る煩雑もある

もうすべて捨てるか耐えるか

問われれば

 

海を放すつもりはないのに

彼是に中てられて

帰れない海

 

海を見ていた

その記憶だけで

生きていける気がするのに