おとのは ことのは

詩と曲を書いています。

春先情話

木の葉を見たのよ

春先に

だから狂っているって言われるんだわ

 

いいのよ

もう今生で何言われようと

それよりも彼の人に会いたい

 

それはむつかしいものね

だって交わらない世なら

歩けど叫べど結果おんなじ

 

木の葉を見たのは本当よ

言わないようにしていたけれど

我慢ならなくて声に出たわ

 

知っているわ

あなたが狂っていないことくらい

だけれど現状もう届かない世で

 

どう生きていくかが肝要だと

言いたいのでしょう

だけどその生きていくという前提も

 

揺るがさないで

私には

見守る義務があるのだから

 

勝手言って困らせているは

どちらかと

誰に決めてもらおう

 

そうね神さえ遠い

彼の人はなおのこと

いいえ何時からそんな殿上に

 

もう木の葉さえ見えなくなれば

楽になるかしら

春先に

愛酔いの月

いつまで月を見ているつもり

昔の人が愛に寄せても

決して綺麗には映らなかった

僕の目は濁っている

 

寂しかろ苦しかろ

穢ればかりが浮き出る黄

どうして人は無垢に愛でる

気づいていないのだろか

 

いつまでも月を見ているつもり

愛していますの意はなくとも

捻くれた者なりに

寄せたい思いもあるからね

可憐の子

俯いているのが気にかかった

世憂うほどの子に見えなくてね

重い鞄を右に左に持ち替えて

小さな体でずっと歩いた

 

その姿を

見止めるたびに

添いたい

ただ添いたいと

念じたけれど

叶わずの空

 

君は笑いながら去ることになる

 

少しばかり先に生まれて

力も体も大きな僕が

その弱きに惹かれた引かれた

 

恋より重いものが残った

 

暦と生きびと

日付へのこだわりが強いわりに

早く過ぎ去れと念じる

己勝手が

治らぬ病より厄介ね

 

また春は陽気に来やがって

人の気も知らないで

 

旧暦のころから生きる者とすれば

もう染みついた癖も抜けず

あしたは駆けるで手一杯

 

水汲み持て

もう知られても知られずも

変わらぬくらい忙し世に

いつの間にやらなったものね

 

頭ぐらつくときには

頭がぐらつき

記憶薄れるとき

暮らし向きのことばかり考えてしまうわ

呪いたくなる性根

 

慈しむ家族が無くても

怯え暮らすよりましだもの

そうやって無理くり

一人生き延びた

果ては倒れる四畳の部屋に

 

あぁ身こころを整えて

できれば誰の目にも触れず

ただ朽ちて消えることはできぬのか

因果なものね

 

嫌った誰かに頼るなら

居なかったほうが良かったと

病床に遺す歌もなくて

七五も綺麗に刻めない

 

ただそんなことばかり唱えていると

また頭ぐらつき

世の不思議や気のまぐわいを

語りたいけれど術なく

暮らし向きに捕われる

 

若人かなた

採れたての野菜に齧りつき

説教のように綺麗な言葉を吐く

彼奴は誰だ

 

俺の知る

剣士ではなかった

 

か弱き女を肩に抱き

顔も見せない囲いよう

呆ける彼奴は誰だ

 

俺の知る

顔つきではなくなっていた

 

もう其れで良いのかも知れぬ

此方が一人で

旧時代に縋り

戦いまでも美化し続ける

報いが来たか新時代

暮れるな春の日よ

優しいふりしたあの人も

暮れ時にはもう遠ざかる

曇り眼には諦めて

人を信ずる心捨て来たか

 

それでも鳥の鳴く

告げの時

やたらと、けたたまし

名残り時

 

暮れるな暮れるな

春の日よ

人は問いに答えるより前

死んでしまうものだから

心の置きどころ

知ったつもりになることは

いちばんの愚かだから

そうならないように

いつも気掛けているのだけど

 

だめね

あなたの側に居すぎると

逆に心掛けがすぎて

狂い出しそうになる

 

私の存在など取るに足らない

価値のないものに思えるから

少しばかりの傲慢を身につけなければ

あなたの隣は苦しいわ

 

難しいものね

両極は思いのほか簡単で

いちばんの敵は

ちょうどいいところ

 

心の置きどころ

偶の見舞い

臥せった姿を部屋の入口 隙間から

見ていた姿が頭に残っていて

どうしても離れないから

気を揉んで 珍しく

顔を見に行ってしまった 柄にもなく

 

此方の憂いなど知らぬよう

気の毒とは程遠く

彼女は窓の外を見ながら

澄んだ声で歌っていて

 

呆気にとられた僕を見て

クスッと笑うもんだから

恥ずかしくもなったもんだけど

君が元気なら

もう他はなんだっていいさ

 

病弱っていうとどうしても

窓辺で憂いて

白いワンピース着た

儚げな美少女を思い浮かべる人いるでしょう?

そんな綺麗なもんじゃないし

しおらしくもないからね

 

彼女らしい言葉だった

そして僕は信じたし

人が臥せるということを

簡単に考えすぎていた

綺麗に描いて目を背けていた

と同時に重く考えすぎてもいた

 

僕は身体も丈夫で力も強いけれど

彼女には遠く及ばない気がした

ずしっと重いものが乗っかったような

軽薄を神に見透かされたような

学が無いから表現も覚束ないけれど

 

春の嵐が過ぎたころ

雷に連れてゆかれた青

見慣れたはずの空が

違って見える不思議

 

思わぬことに見舞われるのは

誰だっておんなじだろう

どうして忘れてしまっていた

我が身に君が身に

降りかからないなどと

 

ただに声が聞きたくて

悪戯な顔が見たくて

会いに行くには

遠い遠い

それでも窓辺で

彼女は

澄んだ声で歌っている

いとしの世界と君

baby faceのいとし人

今日も素敵に歌ってら

花を摘む空を見る

そんな凪さえ忘れてさ

 

candy voiceのいとし人

今日も無邪気に笑ってら

風を切る星に乞う

そんな規律も放ってさ

 

君の見る世界が好きだ

どんなもんかも知れぬけど

君のいる世界が好きだ

この熱を僕の生き訳にしよう

 

baby faceのいとし人

今日もララララ歌ってら