おとのは ことのは

詩と曲を書いています。

酔い子の7月7日飾り

少し遅れたバスに

迷う間もなく乗った

1本逃したら大ごとよ

ずっとガタゴト揺れる道

 

窓にもたれ掛かる酔い子

感傷は

都会の人のような

許されないみたいね

 

願っても

届かぬ7月7日が来る

真似事で作った

戯言を吊るした

 

心地よさなんて疾うに過ぎた

強い風にやられて飛んで行ってくれ

 

隣りのあのコの笑い声が

奥まで響いて掻き消したくて

甘いミルクセーキ

幸せはいつも余所にある

 

なんで今思い出すの酔い子

感傷という言葉覚えて

身をもって知ってゆくのね

 

晴れても

濡れても7月7日が来る

誰かが叶う

自分の叶わないより

 

それが虚しく思えるのよ

口に出してはいけない気もするし

 

吐きそうだって言えない酔い子

責められるような

見捨てられるような

こんな気持ちが似合わないから

 

どう振る舞っていいか

分からない7月7日が来る

キラキラしたものが好きだって

そんな気持ちもあるのにな

 

願っても

届かぬ7月7日が来る

ぼんやりバスの

虚ろ虚ろなのに

夢ではないからさ

 

強い風にやられて飛んで行ってくれ

大人になった迷い子

景色の悪いベランダと

電車の見える窓を開けて

一気に風が通ったから

あぁこんな街に住んでいたんだなって

 

行く先行く先

幸せよりも

苦痛のないこと願うばかり

行く先行く先

旅先のようで

たまに帰る故郷さえ

 

置いてけぼりのような気持ちは何だ

生まれてこのかた染みている

やれ思春期だ何だって

言うには少し大人になった

 

言い訳のきかない迷い子

悪い気も良い気も受ける

 

また夏の果が店先並ぶ頃には

皆こころ浮かせて

沈み込まされた気分になるの

慣れっこ 役割

言い聞かせても

 

行く先行く先

弾かれるよな

心の儘が許されぬよな

行く先行く先

罪人のように

たまに帰る故郷はなお

 

置いてけぼりも思いこみかな

そもそも連れてきてももらってないかな

袖を掴むには

憚られる大人になった

 

きっと死ぬ瞬間まで迷い子

分かって生きてゆくのも辛いな

言い訳の聞かない迷い子

悪い気も良い気も受ける

dark the radio

人の幸せなんて願ったこともないし

これからも願う予定はない

それに対して何てこと言うんだって

綺麗な信言がのさばるから

心やわらかな人が病んでゆくのよ

 

概して浅い人間ほど

声が大きいものだしね

 

春うららかに負けじと今日も

世の底からお届けします

澄んだ貴方の

狡い貴女の

耳には届かないように

 

まるで虫が這うように

今日も心貶めてゆきましょう

―死ぬよりマシよ

 

思慮深き心は

内へ内へ

何処までも広がってゆくものよ

分かったふりの奴らに何が言えるというの

 

明るく陽気な祭りなら

見てる阿呆で結構ですと

 

此方には此方の歌が

線を引くなと悟ったフリが

何を言われても負かされないわ

俯くあなたに届くように

 

澄んだ空と対極の地

今日も吐き散らして泣きましょう

―死ぬよりマシよ

 

庭には何も育たずに

自分の息を繋ぐので手一杯

丁寧暮らしがどうしたって

馬鹿らしくも思えるもの

 

腐った実の落ちるばかり

枯れた花の吹かれくるばかり

何だって掃きだめのように

人の幸せの裏側にいて

 

まるで死んでいるかのように

それでも声を殺さないでね

―死ぬくらいなら

眠り少女

淡い薄オレンジが

今日初めて見た空だった

昼日中 眠りこけていた甲斐もあるというもの

怠けているのを良いように言っているだけでもね

 

狭いベランダ

ふわっと風を通して

今日はこれで

外界に出たってことにしていい?

 

人とは違う

疼く胸を

只々不安と呼ぶのは

勿体ない気がしない?

 

ほっそり雲に馴染んだオレンジ

もうドアは閉めているから

思い出すだけ

過眠を貪る それも憂鬱

忙しなく走る列車の音も

耳に届けば大きくなってゆくわ

 

こんなに力が入らないものかしら

弱ってゆくのは慣れているけど

悲しんでもいい?

 

人とは違う

脆い心を

只々嘆くだけでは

 

生きてゆく焦燥

生きてゆけない痺れ

どちらにしても

からきし駄目で

 

人とは違う

疼く胸を

只々不安と呼ぶのは

勿体ない気がしているの

 

だから語るに落ちて

いつのまにやら

眠るようになっているのね

終わりどきの文

心を落ち着かせるには

だいぶ時間がかかるよう

名前のつかない苦しさが

腹から喉から込み上げて

 

もう仕舞にしましょ

生きているのか分からなくなる時

風はただの煽る凶器

心地よければいいなんて

そんな単純な造りじゃなくてよ

 

澄みわたりを見せられて

傷つく者もあることを

世の隅で呟いたら

 

風邪のひきはじめに見える臨終

息苦しさならお手の物

伝わらないけど誰にも負けないのよ

 

指先の感覚はいっそなくなったほうがいい

在るはずのものが亡くなる時

じんと色のない傷がつく

 

もう仕舞でいいの

生きていたかなんて保証もないから

風に身を任せるなんて

綺麗な歌は糞でも食らえ

とかく大衆に馴染まないのよ

 

空回りにお道化ても

生きていることが恥ずかしい

慣れただけで平気じゃない

 

風邪はぶり返す

戸惑いもする

息苦しさだけ平常の

伝わらなくても分かってほしいのよ

 

淡い期待は捨ててきた

分かりあえる1人を待ってる

息苦しさに咽ぶ時

世は破壊なくとも壊される

 

静かに失くすことほど

じんと悲しいものはないでしょう

愛されず朽ちたその息を

接いでここに置いてゆくから

見つけた人が歌ってね

日和見の手紙

長いこと

手紙のひとつも書かずに

何の沙汰もなく

よければ忘れてほしいのだけど

そうもいかない田舎の四季

 

遠ざかり

波打つように

また引き寄せる日が来るだろうか

そんな日に

貴女がまだ

この世にいる保証はない

 

不孝者だと詰っていいので

忘れてはくれませんか

 

年を取れば

時の流れが早くもなると聞いたもの

秋祭り

慣れぬ化粧の

思い出もなだれ込む夜

 

突っ伏せて

掻き消そうよ

まだ繋ぎとめる気なのだろうか

そのうちに

貴女がまだ

話してくれる保証はない

 

向日葵もって参ろうか

手紙のひとつも書かないくせに

月の言葉

月の言葉を聞いてみる

ねぇ 透明な壁を越えてゆくのよ

 

数年前の悲しみが

尾を引いているのだけど

 

貴方なら貴方なら

知っている気がする

すがりつき

透明な壁を越えてゆくのよ

そっと抱いてくれたのは

幻じゃない?

 

空の彼方は綺麗だと

決め込んだ歌の多いこと

 

数万年の悲しみが

宿っているの知らないの

 

貴方から貴方から

便りを待つほかない身には

憂鬱な気分をぼかしてゆくのよ

解決するわけじゃないけれど

 

ねぇ 透明な壁を越えて

今夜

月の言葉を聞いてみる

夏の子

コーヒーが苦手って言って

格好いいことのような気になった

いつまでたっても垢抜けない

夏は体じゅう掻きむしってさ

 

愛だの何だの遠いなぁ

 

じゃあなんで目で追ってるのかって

意地悪なこと聞かないでカミサマ

あぁそうか自分で思ってるんだ

天はそんなにヒマしてないだろうし

 

いつまでたっても黒髪の

夏が来たってガキみたいにはしゃいじゃって

 

恋だの何だの言うのはなぁ

 

じゃあなんで笑ってほしいかって

恥ずかしいから言わないよカミサマ

あぁそうか別に聞かれてないな

天もいろいろ見てるんだろうし

 

愛だのなんだの言う前に

そっと冷たいチョコムース置いて

小動物のように寄ってくるもんだから

こっちも吹き出さずにいられないなぁ

 

説明してもぽかーんだろうから

言わずにおくけどいいかなぁ

 

いつまでも冷めない夏になりそうな

ちゃんと水飲んで遊ぶんよ

帽子かぶせにこっちも走る

なんだって水辺が似合うなぁ

 

つられて笑う

らしくなくても

不確かに昇華してあげる

2時間起きてまた眠れば

いつが本当か分からなくなる

ネガティブで結構

さがならいっそ

極めてみるのもいいものよ

 

確かなものを増やしてゆくより

すべて不確かにしてやりましょう

強い意志を持った者が偉いなんて

誰が決めた

 

ぼやかしてぼやかしてやりましょう

地球溶けるまで

 

思考が過ぎて

ゾーンに入ってゆくみたい

生まれつき悩みがち

それならもうね

潜ってゆくのもいいかもよ

 

確かなものを歌にするより

これでもかって不確かを並べてやりましょう

力強い声こそ響くって

誰が言った

 

そっとササヤキ誘ってあげましょう

地球逆回転するまで

 

ぼやかしてぼやかしていきましょう

心とろけるまで

そういう生まれの人なのよ

思いのほか強い風にあてられて

ボサボサ髪でむくれてる

予報見ないのが悪いのよ

でもね見たって一緒でしょ

 

天地栄え

愛を覚え

どうして誰の死を目にしたわけでもない

このごろ

終わりが見えて恐ろしいのは

 

きっときっと

貴方が

そういう生まれの人なのよ

土地も家も年も見てくれも

関係なくね

偶にいるのよ

そういう生まれの人なのよ

 

何の月めぐりでもなく

ただただ眠きに堕ちて

それが毎日だと

眠っているのが正常みたいで

 

うつらうつら

現実を

知らぬように知るように

過去を覚えすぎるさま

嘆くことではないはずよ

未来なんて一時の

掻き混ぜ綯交ぜ

まやかしを

少し本当と思っただけのこと

 

そういう星の中なのよ

眠るように起きなさい

きっときっと

貴方が

そういう生まれの人なのよ