おとのは ことのは

詩と曲を書いています。

夏の香ほのか

ほんの少し夏の香残し

また逆戻り

このままじゃ得意の風邪っぴき

宙ぶらりんのワンピース

 

先回りして悲しまなくていいよ

そういうふうに生まれついても

逆らうことも思いつめることさえ

自由でしょ

 

窓のわきに雨の香来ても

ほら涼しげに

このままで夢うつつに落ちて

渇きの遅い夏服たち

 

生き急いで悲しまなくていいよ

それが使命と確信しても

躊躇うことも全うすることさえ

思いのままでしょ

 

狭い部屋に夏の香たどり

夢想を生き

このままで死んでゆくまで

着の身着のまま

自由でしょ

警告節ひとつ

息も絶え絶え

生きているだけなのに

後ろ指さされてるような

気分は何だ

 

狭い島に閉じ込められて

膨れほっぺのミナシゴ

 

ねぇどうして

誰も気づかないの

海がきれい山がきれい

手放しで称えるけれど

原始的な自然が残っているということは

人の心も文明もまた

止まっているということよ

 

やれあの人の車だ

あの家の子だ

噂話に時を費やす

その浅はかさに誰も

 

隅の隅に追いやられて

賢い子ならなおのこと

 

被れ傷は浜で浸して

それぐらいしか学べなかったよ

 

ちょいと来てちょいと帰る

そんな奴らに何が分かる

穏やか和やか後づけばかり

嫌気が差す巡礼擬き

 

まだ残る悪意と好奇

その目も声も低俗故に

掴んで離さない

 

いやなものね

大気は何にも悪くないのに

人の気にやられて嘆き散らかすなんて

でもね

知ったふりの人より

知らずにいる人のほうがマシ

 

だめだよ夢ばかり見て

根を下ろすこと勿れ

明日酔うため

眠気覚まし

明日酔うための

 

パラパラ捲り

時代遅れと言われても

なお弾む

 

月に帰るならいいじゃない

 

度の弱くなってきた眼鏡にでも頼る

旧い物語ほど入り込んで

煙草の匂いは尚嫌い

三つ子覚えが効いたよう

 

伽は済んでも

割り切り宵は

過ごせないよう

 

熱燗運び

時代の歌を詠むものにとり

塵芥でも

 

月を語るならいいじゃない

 

車酔い残るから好きじゃない

旧い記憶ほどこびり付いて

荒い男は尚嫌い

優しい人はその分残るわ

 

三つ子覚えのしつこさと

月に帰った女子の身を

思えば

眠気覚まし

 

明日酔うため

四角四面に雨を打つ

小銭を数えて舌を打つ

そのくせ

皮算用も同時にどこかでやっている

そりゃ狂っていくだろうよ

 

やれ大雨に襲われるぞと煽るものだから

身構えていたのだが

なんのことはない

雲の気 此方には向かなかったらしい

 

一時ざっと覆われたが

すぐに冷めた

 

街は直に降られたらしい

手拭いで頭覆って

まだその時代にいるのかと思い違う

何をそんなに慌てて出掛けていくことのある

 

外の気配は知ったほうがいいが

分からないほうがいい

 

暮らし向きのことで悩まなくていい日が来るだろうか

そうすると何に気を取られればいいだろうか

 

二十四節気も丁寧に辿り

あぁこの国の大気を生まれ生きてよかったと

そんな台詞を吐くことで

慰めの一端にでもなるだろうか

 

現実的な算用が追いついてくる前に

嫌に明けた空を見ながら

空想に耽るとする

歌に恋するのね

やわらかいピアノで始まる

愛なんて一言も言わないのに

生涯知ることもなかったであろう

感情をくれた

 

あぁ心臓を掴んで離さないために

 

この世に生まれたのね

優しく苦しい人の胸

どうにかこうにか出てきたのね

しかと心に受け止めるわ

 

やわらかいピアノの音と

紡ぐ声にやられているのよ

鍵を閉め忘れて夢中になる

音の国

 

あぁ生涯に一度だけ恋をするなら

 

この世には数知れずの

歌が生きるその中で

今胸に響くこれを

相手に選んで間違いないわ

 

人を見れば怯え

一瞬で終らせたくなるような

波の中にいて

確かなものなくても

 

今胸に響く歌を

信じたいと思ったのよ

綺麗な日々にいなくても

恋することもできるのね

小道に歌を

暮れに馴染まぬ褐色の

淡い小道が憎らしく

迎え来る者もないままに

1人帰った道思う

 

あの時渡った島から島へ

賑やかしの街は要らないわ

 

そうやって生きてゆこうと思ったのよ

強い決意じゃなかったけれど

人知れず歌っていようと思ったのよ

闇待ち時 泣かないように

 

背にかかるリュックの痛さも

ぼやかしていくしかないでしょ

 

どうしても生きていかなければ

いけないような気がしてたのよ

暗がりに生れ落ちた身は

何かしら使命があるような

 

思い過ごしも可愛いくらい

生きていたいと思ったものよ

unknown honor

王よりも右腕が

動かしている国があり

体じゅうに赤痣を残した少女があり

誰も見向きもしないことが

何よりの誇り

 

封じ込めの呪文を呼べ

猛き者しか知らぬ

絶対数は尚少なく

世を忌み去るには充分の

 

それでも捨てずに居たことが

人知れぬ誇り

 

また広がる傷に酔い

街の酒場はいちばん遠い

賑わえ人々と酔え

それを背に行くことが誇り

 

明日は晴れる占いを作れ

信条に背いてでも

守れた国がある時に

世を愛おしむには充分の

 

角を曲がり会えることが

人知れぬ誇り

心はいつも波前に

凛としていたいと思ったものよ

夕凪夜凪は味方でも

傍にはいられぬものだから

 

私のこの足でしっかりと立って

前へ前へと進めなくても

せめて

己くらい支えていたいと思ったものよ

 

だって、だって

誰が救ってくれた?

今も今も

続く独りよがり

 

波音は記憶だけでも

充分あるから大丈夫

言い聞かせるうちに真になる

どんなに不確かな命でも

 

確と生きようと思ったのよ

 

海町頼り

車走らせ

まるで楽しみに行く人たちを

えらく嫌っていたのはね

 

もっと恐ろしいものなのだと

そして温かい拠りどころだと

知っていたからなのでしょう

 

凛としていたいと思ったのよ

夕凪夜凪は見えていて

絵より現実より強く

胸に押し迫る世の証

 

負けるわけにはいかないと

弱い身体で思ったのよ

 

波前にいるでしょう今も

狭く暗い部屋でも世でも

凛としている限りは

心はいつも波前に

いち刹那

じっと、息を殺す

その能力に長ける

例えば学びや人付き合いは

何かの役に立つでしょうけど

ただただ潜めた心

少女は何になればいい?

 

答えが待つとは限らぬ未来

平気で3年も4年も経つ

恐ろしくなってくるでしょう?

記憶力が良すぎるのも困りものね

 

ほどほどでいいのよ何事も

過ぎたるは

それすなわち苦しみとも云って

 

じっと、息を殺す

今まだ何者にも成れず

何かに化する予定もなし

少女はどこを向けばいい?

 

恐ろしくなってくるでしょう?

時の中にいると感じすぎるのね

恋待ち酒場

似合わないからやめときな

酒場の泣く女

どうせ1人で帰るのなら

足許確かなほうがいい

 

誰彼となく

優しい腕が待っているとは

限らないのよ

意気込んで投げ捨てられるより

はじめから憂鬱に酔いましょう

 

それで済むならなんのその

慣れたものです

恋待ちも

 

命短しその中で

輝くときはもう刹那より

速くゆくのね

 

愛の形見は誰かしら

残してくれるものだと聞くけれど

あぁ1人だけ切符を持たぬ

そんな気分になるものね

 

酔い酔い

虚ろに閉じ込めりゃ

それで済むのよ

今日のところは

 

だって花火も遠いでしょ

澄んだものです

恋待ちも