おとのは ことのは

詩と曲を書いています。

ことだま

言霊だけは信じることにしてる

もういいよ

ふわり光の

呼ぶなら呼ぶほうへ

聞こえぬなら感じたほうへ

ぐらつくだけ

 

夏影に

息も殺して

明日会う約束を今日忘れる

汗まみれの

帰り着いた部屋もまた

ひとりの寝床

 

軽はずみ

生きてゆけるなんて

言うもんじゃなかった

けどね

言ってしまったからには

 

言霊だけは信じられる気がする

もういいよ

ほたる並木を

すり抜けていったのを

見ないふりして

護ることもできる

 

夏空にやられたのね

看板だけになった店の

甘いにおいを憶えてしまった

大人になれないはずだこれじゃ

 

気の迷い

生きてゆけないって

言ってたのにいることから

もう

奥底にある思いを継ぐ

 

言霊の向こう側を信じてる

もういいよ

強く生きるより

そっと灯すあかりのよう

いられたなら

 

言霊だけは裏切らない気がする

我思うも

不確かな街で

呼ぶなら呼ぶほうへ

聞こえぬなら感じたほうへ

 

神の意に沿うかどうかは

どうせわからぬ街だもの

言霊だけを信じて生きることにする

いばら野分も

野分の呼ぶまま

ふらりと仰ぐか

もう巫女も果てたあと

静か祠に手を合わせ

 

乱れた帯の思ひ出を

かじの強きに描いても

散る葉と

荒狂う木々の

調も成さぬ

情けなき夕

 

野分のにおいにも

つられた凪にも

まだ神子の知らぬこと

幾つか唱え手を合わせ

 

濡れた足もと

思ひ出すにも

かじの強きがじゃまをして

立つ波

逃げ惑う貝の

静かな時分

思ひ出すだに

 

かじの強きに描いても

調とどかぬ

情けなき夕

駅で待ってた僕だって

嗄れた声が好きだったの

どれだけ叫んできたのかも

わかるよ

わかるよ

僕だっておんなじだったし

 

バスは苦手

車もちょっとね

人に合わせるくらいならできるけど

 

待ってて楽しいものなんて

あってないよな田舎の駅で

来るか来ないかわからないよな

小さな電車のことくらい

 

なんで声が嗄れたんだっけ

好き放題に歌ってたから

わかって

わかって

僕だって思いがあるんだって

 

自転車とか

歩くのなら

自然に息が吸える景色

 

去ってって悲しくないものなんて

この世のだいたい全部でしょ

いるかいないかわからないよな

小さな体のむなしさも

 

あってないよな田舎の駅で

破り取ったページ握りしめてさ

何度も歌ったもんだから

10年経っても離れないよ

 

嗄れた声が好きだったの

今でも叫びつづけてる

追いつけるかはわからないけど

僕だって思いがあるんだって

あらしのまえに

泣いたら負けでも

いいよ

カランコロン

また誰か知らない人が

入ってきたから

恥ずかしいよ

話は早く終わらせて

 

こんな時に限って夕立

ひと降り またひと降り

 

アイスコーヒーも冷めるほど

話して心決まるだろうか

 

夏は遠いみたい

思ったそばから急に来る

また誰か知らない人が

聞き耳立ててる気がしてる

 

誰の忘れものの傘

借りていいかな

また来るから

 

甘いケーキにつられても

何でもいいからまた来るの

 

なんだってこんな時に夕立

心は決まらなくても

また来るから

良いも悪いも足早に去ってゆく中で

しゃぶり尽くした幸せを平気で吐き捨てる奴がいる

しんどいことは重なって世を儚む奴もいる

 

天が見ているなんて嘘だ

助けてくれるなんて夢のまた夢

それでも

天はあると思う

 

雨も恵みになり鬼にもなり

日は私の肌を痛めつけるけど

誰の幸せ願うでもなく

少し、恨みながら

小唄うたいながら

 

励まされたと思った節に

一瞬で裏切られた気分になり

刻一刻と変わる心情には

己がいちばんついてゆけない

 

わからぬものは

わからぬままで

言い伝えも破って唱えたくなる

必ず

天はあると思う

 

雨はあがれば形を失い

形ある物を壊しも実らせもして

誰の不幸に寄るでもなく

少し、ほっとしながら

小唄うたいながら

 

晴耕雨読と離れても

染みついた縁があるのだと思う

逃れられないえにしとも呼ぶ

必ず天はあると思う

ゆうげ

うだる一歩手前

夕刻夏は現れる

泣いたふりした私を

見透かして

通りすぎて

 

信号はもう変わったよ

いつまで待ってるつもりなの

祭りの音にまた拐かされて

ひとりふたりと人の消えれば

 

ゆっくり唱えて歩きなさい

夕刻夏は現れる

 

素直に笑ったふり

夕刻夏は極まれる

家路も弾むことない私を

取りついて

取り除いて

 

信号がまた変わったよ

ぼんやりしてくと連れてくよ

祭りの音はずんと増して

ひとつふたつと形を消せば

 

すんなりこころ預けなさい

夕刻夏は極まれる

 

やり直しのきかない人生がどうだって

今思えばなんてないことを

叫んで悔しがって

なんのことない

まやかしの前に成す術なしとも

びた一文だってくれてやるもんか

 

それでも唱えて歩きなさい

夕刻夏は現れる

Radio

こんなはずじゃなかったのにな

トボトボ歩いて是非もないわ

街の音はもう

デジタルに彩られすぎてる

 

愚痴にもならないけどさ

ふとね 懐かしくも

 

Radio 泣きたいことはすべてを

引き受けてくれたよな

愛も必ずどこかにはあるよ

見えなくてもね

 

嫌いでたまらなかった

電波も碌に摑めない町の

必死でアンテナ傾けたり

曲を声を拾いたかった

 

愚痴しか増えないけどさ

なんとかね 生きてくうちに

 

Radio 笑えることなんて

数えることもない僕が

それでも息をつなぐには

必要だった時間

 

Radio 泣きたいことはすべてを

引き受けてくれたよな

愛も必ずどこかにはあるよ

見えなくてもね

花火の色付け

花火のどこかで散る音が

空気だけ夏に持っていった

思い出のひとつも作れなければ

季節など

耐えて見送るだけ

 

手を引く者のある子は

親であれ

他人であれ

何かしらを受け取るだろう

どうか幸あれ

 

minor から抜け出せない身

ブツクサ帰り道も寝床も

頭の中を埋め尽くした code

このまま生きてくしか

 

憶えのあるような無いような

甘いにおいに夏が染みた

心のひとつも明かさなければ

今世など

明けぬままいるだけ

 

手を引く者のある人は

子であれ

他人であれ

何かしらを授けるだろう

どうか安らかに

 

minor に支配された身

調べ綴ろうにも暗く落ちて

開けないまま辿る code

 

もっと明るい曲を聴けと

言っていた人がいたけれど

それは、そういう住処の人達が

することでしょう

 

花火のどこかで散る音が

どちらにでも色付けできるけど

こちら minor に支配された身

開けないまま辿る code

宵入りねんね

蒸す夜のねんねころり

替えた襦袢のまたしめり

ハナウタ、子守唄になれば

すっと寝にも入ろう

 

かさぶた知らぬ間に剥がして

また泣く子のゆらゆらと

花色、決めたそばから

ぐぜるか

全部すきできらい

 

仰ぐ風と網戸に入る風

どっちが良かろ

赤い傷の残らぬように

守して更けりゃ

 

うだる夜のねんねころり

線香に夏を見て

目覚めてまた泣くまで

ひと仕事、夢にも入ろう

 

やわ布また蹴とばして

風邪ひくなよ、ゆめゆめに

花飾り、壁に守り

時計の針を忘れるころ

 

きょうも1つ、おぼえた言葉

なんでも良かろ

淡い世に世にたゆとうよう

守して明けりゃ

予感の子

何も生まれぬ憎しみの上

また電話が鳴り響いた

取っても取らなくても

後悔を与えるような

予感の子

 

どうして

普通に産まれて生きることが

幸福でなくてもゆっくり死ぬことが

 

遠ざかる

遠ざかる

思い描けば露に消えるなら

諦めたくもなるものよ

最初から不幸なのだと

 

 

優しい夜を過ごせましたか

なんら特別なことはない

ないことが幸せなら

心の安寧など

さよなら

 

どうしてベルに怯えたあとは

動悸がやまないようにできて

 

近づいて

近づいて

心臓抉るくらいなら

知らずに露となりたかったよ

夢も現の

予感の子