讃美は苦手だった
それだけでは罪にならぬとしても
さんはいと口にできる言葉ではなかった
メロディに至っては
鳴り始める前
pipe organ の音の気配だけで
苦しくもなった
神に賭す覚悟など
本気で持ってしまったら
死んでしまうよ
どうして皆わからないんだ
平気な顔して歌うんだ
自分の生きていない世界を
伝え聞き思い描くだけで
気が狂ってしまうよ
讃美などその最たるもので
平然と神を前に
口にできるか
無理からぬ
美しければ美しいほど
胸は詰まってゆく
あぁそうして生きている気がするだけで
本当は此処に無いことを
知らなければいけない儀式が待っている
讃美なんて
おいそれとできるものか
pipe organ の音の気配だけで
背は震え走る