雪を見たつもりが
夏待ちも近い
そうやって誤りを正していくのか
記憶と想像を生きすぎて
現状は何にも見えないや
年端もいかぬ頃
聞きおぼえたメロディーが
離れなくて離れなくて
苦しくもなるくらいだ
果たしてこの地は
本当にあるだろうか
あったとして
私は居るだろうか
哲学の一言で済ませたくないや
雪を見たつもりが
夏待ちも近い
思い出の季節を外れて
打ちあがった花火の所為か
道すがらの草花を
ひとつも知らない所為か
感覚の過敏を
病の一言で済ませたくないや
手触りを残さずに
死んでいった人のようだ
あとは残像と声と香りに頼って
思い出し吐き出す作業だけ
雪を見たつもりが
幻だったみたいだ
本当だとしても遠い
夏待ちも近い