棚に並んだ旧い物語
泣きかけた夜に啄ばみもする
カビの匂いがふと来ても
潔癖を越える
会いたい誰か
助けてと声を出せぬ分は
その中に潜ってゆくほか
ペラ紙1枚の先に
愛を見るでも
恋しがるでもなく
本当に中に落ちてゆくほか
ない身のこの身の重いこと
ふわふわ浮いてゆく童話
世を楽しむならいいかもね
私は落ちてなんのその
どうせ沈むなら物語とともに
外は雨
お決まりの雨
これも架空かと聞き紛うほど
絶えず雨
堪えきれず雨
やはり生き地は此処なんだと
どうせ沈むなら物語とともに