おとのは ことのは

詩と曲を書いています。

海町でみる向こう岸

波の音が聞こえるのよ

嘘みたいでしょ

誰もいないグラウンドに

 

遠浅の潮香もとどいて

涙目をまた潤ませた

 

大人になったら

こんな町

捨ててどこまでも行ける

駆けだしたところで

向こう岸は今まだ遠い

 

儘ならぬことだらけだと

ただそれだけを知った町

 

そっと歌をうたいたくも

じっと息をひそめたくも

叶うようで叶わない

 

遠浅の澄むそのさまが

憎らしくなる前に

さよなら

 

大人になったら

忘れてく

だけど今どう持てばいい

堪えきれない胸の奥

向こう岸なお

なお遠い

 

表せぬことばかりだと

ただそれだけを憶えた町

 

やさしく鳴るな

チャイムのせいで

揺り戻されて

陽も帰る

 

大人になったら

こんな町

捨ててどこまでも行ける

荒れることすらなく

燃え滾る胸よ

 

大人になったら

忘れてく

だけど今どう持てばいい

誰が知るだろう胸の奥

向こう岸なお

なお遠い