忘れることが才だというのなら
私はどれだけ落ちこぼれかしら
両の耳から入る音楽も
そっちのけで思い起こせるわ
夏休みは日暮れもなお遅い
5時の鐘にもまだ照る太陽
めずらしいでしょ
いちばん西の町
いつか思いたった時に
行ってみるといいわ
盆参りには
夕餉を終えて
バケツとライター持って
坂をのぼる
線香あげて
手を合わせるを覚える
あとはパチパチと
花火のにぎやかし
めずらしいでしょ
遠い島の話
いつか話したこともあったね
決して風通しはよくない家に
無理やり居付いた魂だもの
美しさは自然に全部
持っていかれたと考えるわ
それでも淡く残る夏夜
聞き覚えた戦の話
孫の代が参るものだと
押しつけがましい言いつけだけれど
何もかも古く鬱陶しい中で
ただ手を合わせていることだけは
正しいはず
正しいはず
それが平和の祈りでも
魂の参りでも
忘れることが才だというのなら
私はどれだけ落ちこぼれかしら
損ばかり苦しみばかりの性分
それでも覚えていなければ
いけないことが
夏めぐれば
日中の汗と甘いかき氷と
潮の匂いとと線香の煙と
一緒に思い出せ
正しいはず
正しいはず
手を合わせていることだけは