おとのは ことのは

詩と曲を書いています。

沈みゆく秋

秋の果を愛でる間なく

風はなお強くなり

届けてくれる者どころか

思い出されることもないだろう

 

木々茂る庭でも持てば

枯れる様だけでも

嘆けたろうに

 

下手に都会の病の床

連れてはゆけぬ機器ばかり

望んで移った馬鹿者の

己に叱りつけるには

時は戻せぬ

 

散りゆく葉を目で見れば

一層駆られる郷愁も

いつにこれほど遠ざかった

思い描くしかない屋根の下

 

嘆いてばかりの若人など

お呼びでないのか世のほうも

それは済まぬ

 

やけに広がる日中の空

それも狭い窓から感じるだけで

思い過ごしかもしれないな

己の息が続くことも

時に逆らえぬ

 

せめてあと少しと

思いも致さぬ神に

願ったところで

 

秋の果を愛でる間なく

望まず着いた病の床

押し出されるように逃げ込んだ

街に傷つけられるとは

時は呼び声に

 

応えぬようにできている

連れてはゆけぬものばかり

せめて愛しさの1つでも

胸に持てればよかったが

時は戻せぬ