おとのは ことのは

詩と曲を書いています。

参りもせんと

参りもしなければ

砂を被るだけの

それでいいのよ

時代でしょ

誰かに言ってほしいもの

 

名も知らぬ遠縁の戦没者も併せて

頼まれたから

その時は

素直に請け負った振りをして

 

花でも供えれば

顔でも見せれば

それが正しいことでしょう

できないことではないから

尚のこと

 

罪負ったような気になって

夢にも見るのです

 

車通りの近いから

余所見て歩かんようにせれ

今はもう

大人だからね

そんな気も遣わなくていい

 

参るのは孫の代になるんだと

言われるままに

その時は

素直に心に置いたもの

 

水でも汲めば

声でも掛ければ

それが正しい営みでしょう

心の持ち方ひとつだから

尚のこと

 

責めらせたような気になって

夢にも出るのです

堕ちてゆくほか

昼に寝ざめて針を追う

後づけの理由はいくつもあって

生きにくいと言えば沢山

生きていられると言えばそこまで

 

昨日炊いた飯を食み

金勘定ばかりしている

持てる者のそれではなく

持たぬが故の勘定が

 

世をむなしいと名づけたなら

堕ちてゆくしかないだろう

その底で

あぁあの時はましだったと

呟くほか

 

幸福の感じ方を

知らぬから何処までも

堕ちてゆくよりほかないだろう

決して天に祈らずに

 

懐かし節を思い出し

そこに綺麗な思い出でも

一緒につけられたらいいけれど

浮かばないから困りごと

 

あぁあの時に戻れたらと

青い季節が恋しいと

人の言っても

歌の嘆いても

私はそんなこと思わない

 

恋しがるほどの思い出に

出会えたためしがないもので

世の隅で

否、存在からあるか分からぬ所で

ただ息をする獣です

 

幸福の感じ方を

知らぬから何処までも

堕ちてゆくよりほかないだろう

決して天に祈らずに

冬道に残りますように

雪のない町も

冷え込んだら手を

握りたくなるものよ

 

わがままでいっぱい

埋まったところ

あなたは同じ歩幅を見てるの

 

幸せになるまであと

どれくらい

贅沢かな

神様

恋でも祈りでもいいです

この時が

過ぎることは知って

せめて

ほんの少しでも残りますように

 

白い息と

鼻赤くして

笑わないでよもう

子どもじゃないから

 

それでもあなたは

知っているもの

泣きじゃくった幼い日から

 

大人になるのなら

どれくらい

日を追い

神様

愛でも誓いでもないまま

この時を

過ぎて覚えていて

未来に

ほんの少しでも思えますように

 

じっとしてらんないから

走り回った道が

ほら白いよ

 

先に大人になったような気がして

遠くに行っても

今そばにいても

寂しくなんかないよ

過ぎるなら全部寂しいよ

 

幸せになって

どれくらい

あなたと歩いていられるかな

神様

恋も祈りもこめて

この時が

過ぎることは知って

せめて

ほんの少しでも残りますように

海の見える町に落としたのね

海をじっと見ているだけで

高鳴った胸を覚えてる?

きっと生まれ落ちた時から

感じ取るように教わっていた

 

教室も窓は今日も陽を

どこまでだって受け入れる

思い出を持たなくても

生きてゆけるよ大丈夫

 

苦しさとか思い過ぎを

備えた体でいる代わり

せめてもの小さな力

海の見える町に落としたのね

 

バスに乗って

仲間と一緒に

海を見に行こう!っていう歌を

不思議な気分で聞いてたの

だってそこにあるものだから

 

グラウンドを飛び越えて

いつでも砂浜、青を見る

思い出に潰されても

生きてゆけるよ大丈夫

 

記憶なら幾つだって

備えて重ねるその代わり

せめてものご褒美みたい

海の見える町で育ったのね

 

素直には慣れない星

なったフリならできるけど

その奥に

ずっと奥に

確かに煌めきがあるとすれば

 

海の青

世界の先

陽を受け輝くその様が

せめてもの小さな力

海の見える町に落としたのね

禍々しい思いもあるもので

息を殺して目を見張る

全身使って備えなければ

突入できないような屋敷でした

いいえ

戦時中の話ではなくて

ごくごく最近の

ここ十数年の話ですよ

 

信じられないと目を見開く人

想像もつかないと嘆く人

どうかこのまま去ってあげてくださいな

目の前で呼吸困難になっている娘は

そうして出来上がったのですから

 

痛い苦しいは

心を侵して

魂までやるものだから

何にも知らずに

物珍しさに

立ち止まるくらいなら

去ってあげてくださいな

寒の戻りに思うころ

寒の戻りも慣れたでしょう

仕舞おうとした服を引っ張り出して

緩やかに穏やかになってゆくわけではないと

言われたでしょう

 

言った人が世を去っても

世はあり

私は生きねばならず

 

幸せは

私の幸せは

世とはいちばん遠いところに

在ることが

または無いことが

もう分かっているというのに

 

春の気にやられたのでしょう

責めるつもりはないはずよ

ただただ三寒四温をそっと

営んでいるだけでしょう

 

去った人が世に戻っても

いつか去り

私もほかではなく

 

幸せは

私の幸せは

世でいちばん不確かなところに

転がって

またはもう溶けて

なくなっているというのに

 

呼んだ人の声がなくても

声は残り

私を生き延びさせて

 

幸せは

私の幸せは

世とはいちばん遠いところに

在ることが

または無いことが

もう分かっているというのに

宵に敗れるとき

つらい顔見せないからって

抱えてるものもあるかもよ

思わせぶりに何度も

あのコは言うけど

 

それでも

見渡せるって言ったら笑う?

神のような錯覚を笑う?

見通せるって感じちゃうって

そういう人もいるものよ

 

また分からずやの溢れる星に

落とされたような本能が呼ぶ

これが病というのなら

甘んじて受けましょう

君の一歩

君の一歩

何にだってならないよ

世界にとって

焼けかぶれ引き摺った

それでも届かないもんだな

 

愛想笑って切り抜ける

うまくやるもんだから

生きにくいって言いながら

生きてもゆける

損だなぁ

 

気づいてももらえないまま

かたくなった顔

いつか

思いきり怒っても泣いても

受け止めてもらえるといいね

 

君の一歩

何にだってならないよ

世界にとって

暮れなずんだメッセージ

1人で感じ取っちゃうような

 

君の一歩

何にだって替えられないよ

世界の隅で

引き籠った思いのまま

出てゆく勇気を買ったんだろ

 

天は今

アメフラシ

思い通りになんてさせるかって

意地悪のフリしてね

いつか優しくするフリだったりね

 

君の一歩

何にだってならないぶん

世界にとって

君の一歩

何にだって替えられないよ

ほら陽も言うだろう

愛の調べ

愛の調べはどこに行ったか

思い致す間を惜しんで

フイっとされた

 

泣いてみるかい?

この3拍に乗って

おもむろ向こう側と繋がることもあろう

 

また熱を持って

ムクれたのだろう

誰の所為でもないまで知って

それでも

 

幼心に染みついて

離れない調べを

起こすころ

 

行ってみるかい?

好きな道を

それがどれだけ難いかも知り

 

それでも勧めるにはわけがある

愛の調べを懐に持ち

行って見るかい?

あなたの影

すれ違いざま

瞬きを忘れて

まさかあの人の影に会うとは

知らない街の強さに惹かれて

忘れていたわ

私の弱さを

 

記憶は追いかけてくるどころか

未来にも待って

私を待って

 

守りたくてたまらないでしょう

脆い心を

いつでも眠りにつける体を

落とすまで

落とすまで

生かさなきゃいけないと思った

 

また来た道を

戻れば会えるような

まやかしは憑き物

呪われるより怖いこと

恋は厄介な代物

 

記憶の隅にあるはずが

私の真ん中にいて

何だって

 

歌に落ちてそれより先

脆い心を

自分で満たすしかない

できるなら

できるなら

連れてゆくしかないみたい

 

人で溢れた街のこと

嫌いというには早い気も

あなたの影に会えたのなら

もうそれは宝物にしていいでしょ

 

大それた詩を書く気はない

歩いていてよかった道

思い通りなんてなかった

人生を繋げてきてよかった