おとのは ことのは

詩と曲を書いています。

寒の戻りに思うころ

寒の戻りも慣れたでしょう

仕舞おうとした服を引っ張り出して

緩やかに穏やかになってゆくわけではないと

言われたでしょう

 

言った人が世を去っても

世はあり

私は生きねばならず

 

幸せは

私の幸せは

世とはいちばん遠いところに

在ることが

または無いことが

もう分かっているというのに

 

春の気にやられたのでしょう

責めるつもりはないはずよ

ただただ三寒四温をそっと

営んでいるだけでしょう

 

去った人が世に戻っても

いつか去り

私もほかではなく

 

幸せは

私の幸せは

世でいちばん不確かなところに

転がって

またはもう溶けて

なくなっているというのに

 

呼んだ人の声がなくても

声は残り

私を生き延びさせて

 

幸せは

私の幸せは

世とはいちばん遠いところに

在ることが

または無いことが

もう分かっているというのに