朝の移ら

捻たことなら幾らでもいえるのに

肝心な優しさは1ミリも出てこない

 

例えば狭い部屋で

広い宇宙で

彼女が痛んでいるのを気づいていて

救うなんて以ての外

もっと傷つけくらいに思っている

 

私の心を救った彼も

必ず周りに人がいて

その中で歌うものが綺麗事に見える

あぁ歪んでいる

わかっていても

 

自分が可哀そうな生き物

それゆえの

それしきで嘆くなと苛立ち

輪をかけて可哀そうな生き物に

なってゆく

いずれ腐って消えるかもしれない

それでも大して痛手は無い

 

朝日は嫌に入り込む

今日は雨だと聞いていたから

内心楽しみにしていたのに

 

不幸せなら皆で浴びて

そもそも雨を不幸と思うことがいけないね

どうりで幸せになれないわけだ

 

優しいのが一番いいことくらいわかってるよ

だけど優しい人だらけなら

この世はとっくに潰れてる

汚い思考も才だと唱えなければ

やってらんないよ

 

こうやって鬱々と

捻たことなら幾らでも出てくるのに

肝心な優しさは1ミリも発動しない

homage

忙しない世は確かだが

この切迫はその所為だけではない

己の心に静寂がない

止まるのは無理でもせめて

緩やかにあれ

 

街を抜け駅を出て

ひととおりの喧騒をのんだ

いつの間に眠った

 

心ここにあらず

カヴァレリア・ルスティカーナ

 

あぁ私は

何を生き急いでいたか

誰の所為にしていたか

 

胸が詰まるのは

解放されるためだとさえ思える

 

まだ世にはこんな旋律があった

この世にはこんな感情があった

森へ帰る

いつか森へ帰る

 

市井はわりと海に開け

海が開けているという

なるほどそのとおり

 

しかし森の広さを知らぬのか

生い茂る様

迷い入るからこその

ある意味広大さを孕み

人がきづかぬ、ことまで含めて

 

いつか森に出会う

その人もひどく少なく

知らぬまま死するが幸せと思えるほど

 

市井は今日も賑い

商いは街へ海へ海の向こうへ

籠を抱き

広がる先は森ではないところ

あぁ知らぬのかきづかぬのか

 

虚しいけれど

どこかほっとする

ここは穏やかな園ではない

 

いつか森へ帰る

ほんの少しの、人がきづけばいい

ぶり返す静かな波

また床に臥せた

いつが正常かわからぬくらい

悔し床に伏せた

 

喉の痛みは強まり

そう考えていると益々強まり

もうそれだけで死ぬのかと思った

 

そんな思いをしていた近い過去を思い出し

そうか、これも過ぎ去ると知り

それでも臥せていることは

私には堪えた

 

望んだわけではないのに

有耶無耶なまま

また床に臥せた

旅をしているか

今や天から見下ろす感覚を得て

しかし我が身はごく狭い地に留まる

 

旅を望んでいるか

思わず考えているだけなら無理しなくていい

得るものはあろうが行かずともよい

 

ただ今ここが耐えられぬ

どうしても耐えられぬ

かといって旅先に楽園はなし

ひとときの逃避に過ぎず

 

今生、真の意味での逃げ場なきこと

もう気づいているので

無理しなくていい

 

旅を望んでいるか

それなら行くといい

世の一刻

目に映るものは全て毒

降る時は全て災い

閉塞は元々から備わり

可哀そうな生き物だと彼は言った

 

尊い歌は

感じる力のない者の前で歌われ

清い言葉は

意味を得ぬ者に届く

長けき子は

器無き親の元に生まれ

自らを失した

 

この世は悲しいことばかりと

彼女は悟った

春の野に

花飾りまとい現れた童

なんと純朴に世を見る

この野原にそぐわない身を

申し訳なく思い

 

しかし一定数

そういう者が必要ならば

私が負っているのだと

心に慰めを

偉そうな講釈たれるつもりはなし

ただ心に慰めを

 

花飾り一片二片

風に散り

駆けてゆく童