おとのは ことのは

詩と曲を書いています。

桜通りの子

眠りに入るとき泣かぬ子は

いつも泣けぬ大人になる

叱られる前に汲める子は

いつか褒められるときを待っている

 

季節がゆくたびに

手に取れぬことを知り

桜葉を手提げにくすねて

形見にしたのでしょう

 

五差路をすぎたとこ

もう目いっぱいの桜通り

泣いたりはしないでしょう

ぐっと堪えてきた子だもの

 

誰かが笑っていると

ほっとするよね 分かるわ

誰かが少し怒鳴ると

びくっとするよね 世が終わるように

 

季節を迎えるたび

足も疲れているくせに

桜葉をふと見上げて

仕舞いには走り出すでしょう

 

駅前の広場にまた

見知らぬ人が歌う声

泣いたりはしないでしょう

感受鍛えた子だものね

 

改札を抜けて待つ

電車が来るまでは春を見て

あぁいとしの桜通り

ずっと待っていた褒めそやし

 

生きているうちには

出会えないかもしれないけれど

この景色に辿り着いた子だもの