おとのは ことのは

詩と曲を書いています。

止まった時計

その時を指して止まっている

時計がありました

生まれた時から何度も

目に触れていたので

何思うでもありませんでした

 

あるとき不意に

あぁ熱はこんなに届くものなのかと

苦手な科学をもってして

少し解った気になって

 

もしも真下にあったなら

時の運やらあったなら

粉々に散った人の

爛れた人の

たまの偶々そうでなかった人の

 

命の先にいるのだと

ふと気づいたのでした

 

世の尊さはまだ知らぬ

人の汚さに晒されて

育ったものだから

見事に捻くれました

 

だけれど本当の惨忍さは

あぁ1ミリも知らないのだと

分かったつもりになるでない

胸を叩かれた気がしました

 

思い致すだけでこんなにも

苦しいのなら

熱線に晒された身の

どれだけ息ができぬのか

 

分かったつもりにならないように

そして忘れることのないように

 

怒りより祈りの先に立ってしまった街で

思いました

 

その時を指して止まっている

時計がありました

 

和やかな景色も

路面電車

好きなものは幾つかあるのに

少しずつ記憶薄れる中

 

もう見ることも無いかもしれぬ

その時計を瞼の裏にあって

離れない意味は