おとのは ことのは

詩と曲を書いています。

盆過ぎもなか

何年も帰らんくなった娘子の

名を呼んだ

噂話の田舎町

 

潮に畑やられ

毎朝船は来ても

来んものは来ん

 

怒鳴り散らかす馬鹿息子を

さらに育てたのは誰

戦の時分はしょんなかった

その後も精一杯やったとよ

 

分かってはおるけど

分かりたくもなかばい

 

娘子は知恵ばつけるもんじゃなか

ほら言うたこっちゃなか

嫁にも行かんと

帰っても来じな

 

おいの所為ではなかはずよ

人の家の羨ましくなるかて

 

分かってはおるけど

分かりたくもない

 

早くに亡くした娘の

その子も姿を見せんくなった

あん人の所為たい

こん人の所為たい

 

美味か飯ば食わせてやった

荒れとるなんて

人に言われるまで

思いもせんかった

 

盆も正月もなかとね

涙ん出てくっばい

 

分かってはおるけど

分かりたくもない