思いだしていたの
口伝えにしか
物語を聞けなかったころ
布団を頭まで被って
想像したもの
想像したもの
悪い夢を幾つも見て
それが現実かも分からなくなって
不安になったこと
誰にも言えなかった
息の苦しさや
皮膚の爛れを
今なら簡単に共有できるけれど
むかしは良かったなんて
ありきたりなことも思わないけれど
それでも儘ならず
苦しかった日に
想像でしか行けなかった
触れられなかった優しさに
ほんのひとすじの光をくれた人のこと
忘れないものよ
思いだしていたの
なるべくの新しい物を切って
夜にくべるだけの
時間を持ったなら
思いだしているの
また布団を頭まで被って
優しい人に会えるかななんて