生まれ育った家は壊され
いよいよ帰り場所を失った
存外に肝の据わった女子だ
瞬きもみせなかった
あぁ田舎町にはよくあることだ
手を引かれた浜だけ残り
あとは瓦落多
最後は形もなく
見送る身になる
生涯数十年
保って百年
短しと嘆いた歌は数多くあれ
此方が先に斃れぬこともあると
小さい身体で知っているのだろう
共に過ごした人は去りゆき
孤独というものが背に刻まれた
存外にその時は悲しさなど
持たぬようで
あぁ崩れ星にはよくあることだ
流れ着いた先で偶々に
時を過ごし
地を踏んで
後は然様であるならば
生涯数十年
保って百年
尊いと称えた歌は数多くあれ
何方か先に消えゆく流れ
物語でその身で知っただろう