おとのは ことのは

詩と曲を書いています。

捨てて春だから

ずっとバスを待ってたのは

幾つ前の春だったか

溜め息も飲みこむ緑

厄介な煌めきだと思ってた

 

遠ざかるほどに恋しくなるなんて

唄は言うけど

私はそんなこと思わないよ

捨ててよかった故郷もある

 

強がり、捻くれ、気の迷い

何とでも言ってくれ

春だもの

 

往々にして温かさというものは

思っているより外にある

ほっと息をつけない部屋

籠もる理由もないわ

 

草臥れるほどに優しくなるなんて

昔の人の言い伝えをやぶって

荒れてゆくよ

安らぎなんて探さなくていい

 

戻れず、進めず、立ち止まれず

どうにでもなってくれ

春だもの

 

綺麗な季節に

綺麗な唄を

うたって何が楽しいか

この世の春とは残虐な

見世物

ひと刹那の紛い物

 

遠ざかるほどに恋しくなるなんて

唄は言うけど

私はそんなこと思わないよ

捨ててよかった故郷もある

 

強がり、捻くれ、気の迷い

何とでも言ってくれ

春だもの