墓は爛れて
いつ崩れてもおかしくないような風情
まるで今生のようだと
向こうに行っても
こんな不確かな箱か
柄杓に少し掬った水を
ぽとぽと落とす
気も抜けて
日差し恋しや
秋の夕
誰も目くれぬ石はただ
参る者のため建ちつづけ
風に爛れて
崩れ待つ
申し訳立たぬ
涙も出ずに
ただに世を咽ぶだけの子を
一時だけでも
恋しやと
思ってくれて有難う
日差し恋しや
秋の夕
誰も目くれぬ石はただ
晒されるために建ちつづけ
日々に爛れて
崩れ待つ