声がいちど死んだことを
誰も気づかぬほど黙っていた
あれは14
遠きの夏
暮れに汗を拭き
下る坂の
ぐらつくを覚えている
喉の痛みを
翳むクラクションを
光失ったわけでもないのに
僕の世界は閉じた
声がいちど死んだときに
誰にも言えぬままでいたから
元に戻ったふりをして
今でも引きずっているようだ
田舎町だから
暗い家だから
僕などただの塵だから
どれも合っていて
どれも違う
僕は声を失って
かなしかったんだ
誰にも心開かなかったのは
そうしてもいいと教えられていない
声がいちど死んだときに
僕もいよいよ閉ざしてしまった