おとのは ことのは

詩と曲を書いています。

海町風待ち

海を見ていたころ

私は幼かった

逃げ場として見る青は

とても遠かった

 

風の振り向きざま

友になれた気がした

ほら私も行く瀬なし

どうせ放られる

 

家に帰るころは

息をのんだ

皆が言うあたたかさは

どこにあるんだろ

 

息をつまらせても

無理に繕っても

この世にいる限り

人として営むしか

 

海を見ていたころ

私は幼かったのに

前にも生きていた

気がした

 

家はここではないんだろ

願望をこめて

唱えて唱えすぎて

本当になっただけかな

 

風の吹くそのさま

好きで好きでならなかった

青春とも感傷とも違う

私の友だった

 

今もしも帰れば

海を見ることはできる

けれどもう逃げ場ではない青は

とても近くて

 

つまらないものに

なっているのか

私がつまらないものに

なったのか

 

海を見ていたころ

思えば思うだけ

風もぶり返す

病のそれに似てしまう